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vol.13/ワナ3<秋野マジェンタ>

 そうそうナオミの話。再会を祝う盃をかたむけながらの巧みな会話運びで、モトッチに後日メールで「実は、あの夜はけっこうそそられたヨ」発言をさせたナオミ(ワナ1)。思わず体をくねらせながら、照れ照れになったはいいが、なにせ新幹線の始発点と終点に住む二人なので、いきなり圏外モードでため息。ところが、急にモトッチの住む街への出張が決まった(ワナ2)あのナオミの話のつづき。
 2006年6月22日、午後8時に南口のタクシー乗り場脇の階段で待ち合わせ。8時7分。モトッチあらわる。ここで最後まで早送りして結果発表。翌23日の午前2時、モトッチとナオミの性行為終了。ただ私が興味をもっていたのは、肉体関係の有無ではない。お互いにやりたい、やられたいの2人が夜に待ち合わせたのだから当然である。私が一番聞きたかったのは、「その結果、何かをクリアーに把握できたの?」である。
 出会ってから昨秋までの足掛け約6年、それまで年数回のメールのみの関係だったのである。去年の10月だったか11月に会ったとき、会話が思いがけず色艶を帯びてきて、何か月もたった今年の春、モトッチからのメールに「この次会ったら、一晩だけでいいからオレのものになって欲しい」とあった、それだけである。向こう2年は再会は無理と決め込んでいたナオミは、やけくそ気味のOKメールを出したのである。それが2か月後にベッドイン。メールはくれぐれも慎重に……というお話ではなく、そうそう、「やっちゃった」結果、アンタどうすんの?相手がどうしたいのかは分かったの?と聞いたわけである。
 ナオミの答えはこう。「今回一回きりなら、かろうじて悲恋だろうけど、2回目からは、ただのセフレだよ。なしなし。とりあえずリセット。私から次のステップへ促すことはないね。メールだってこれから、ガンガン地声で打つ。手加減なしでいくよ。そうすりゃ、一回だけでも抱けたのはラッキーだったと思うよ。」
 そうそう、同感同感。だってさあ。このモトッチ君はさあ、ナオミとその週に会うことが2ヶ月も前から決まっていて、その日に会うことが1ヶ月も前から決まっていて、さらに、かなりの美人さんであるナオミを抱ける可能性大大大なのに、7分遅刻。行き先決めてない。段取り決めてない。その割には、おそるおそるナオミの恋愛観なんかについてのジャブ質問を投げてくる。2軒目のお会計が近づく頃にやっと「今日はナオミ帰る前に、オレのものになるんだからね」と滑り込み。ナオミが「凛々」モードだったからいいものの、「アタシ疲れてるし帰る」とか言い出したらどうすんだよ?唯一、意思が見られたのは、ラブホを選んだときあたりか?
 「ないない。私とのことを一瞬でも真剣に考えたりしたことなんか、ヤツは、私と事におよぶ前も後もないね。だってさ、寝たい、それ以外の意思表示はなにもされてないじゃん。」 ちなみに、過去6年の間にモトッチは結婚して離婚のバツイチ。当分彼女つくる気なしの多趣味男。ナオミは未婚の母でバリキャリ。そして私に言わせれば、ナオミさんよ、そこまで冷静に、そして真剣に分析するってことは、モトッチ次第では「悲恋」になったんだろうな。ヤツのずるい羊っぷりのせいで、やむなく「わりきり」に乗り換えたんでしょ。いいねえ、その気高い捨て身の姿勢。きっと「わりきり」きれずに泣いたんでしょ。一人で。(自分のことなんか棚にあげちゃってさ)
(原文まま)
*掲載号では校正、編集したものを発行*
2006年7月28日号(vol.127)掲載
by tocotoco_ny | 2006-07-26 13:19 | オンナの舞台裏
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