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vol.22/写真うつり<秋野マジェンタ>

 私は写真うつりが芸術的に良い。中学に入って、体育祭などで友人同士写真を撮り合って、後日アルバムを見せ合うという「女子」アクティビティーにデビューした当初から、知己らに「写りいいね」と言われ続けてきた。「写りが良い」の取り方は人それぞれだろうが、私にとっては「普段の表情や動作の集積の中で、最良かつ一番自然な要素が写真に出やすい」という位置づけになる。写真うつりが良いという見解は、自分の美醜云々ではなく、自分にはどうしようもない結果の描写にすぎない。「天然パーマだね」と指摘されるのと大差ないのである。vol.22/写真うつり<秋野マジェンタ>_f0055491_15232721.jpg
 個人的な定義はさておき、写真うつりの悪い人。2通り存在する。
 まず第1陣は、己の身体(この場合特に顔面)をよく知らない人である。概して、あまり自分の外見に自信の無い人である。自信が無いから正視しきれない。隅々まで観察が行き届いていないから、それに関する知識がない。よく知らないから、(表情筋などを)どう操ればいいか、わからない。わからないなりに、一応「こうやればマシに写るちがいない」という見切り発車に出る。結果、「なんじゃ、こりゃ。アタシはやっぱ変な顔」となる。こういう人達に共通して見られるそもそもの間違い、というか勘違いは「写真うつりが良いのは美人の特権で、美人は生まれながらにして、なんら努力や補強せずして美人」と思っていることである。だから、自分が欠点と思い込んでいる部分にフタをして、思考停止となる。結果、次び写真を撮る時になって、再びうろたえるという不運なループにはまる。抜け出す道はただ一つ。眉の生え方から姿勢まで、あらゆる身体的要素を、善悪、優劣に振り分けることなく、唯一無二の武器を発掘するように、つぶさに観察することである。知れば余裕が生まれる。余裕が生まれれば、いっぱいいっぱいに構えて凝り固まった表情ではなく、より自然なプレゼンが可能なはずである。そして気がつくと、「お、いいねこの顔」と思える写真が増えているはずである。
 さて、第2陣さん。この人達の写真うつりの悪さは、ちと分かりにくい。なぜなら、このカテゴリーには美人さんと呼ばれる人が多いからである。世の美人さん達はたいてい、美はメンテの賜物であることを心得ている。だから、鏡の前に立つ時間も第1陣さんに比べたら多いであろう。さらに、美人さんというのは、基本的に「笑顔が素敵」である。よって第2陣さんは、写真に完璧なスマイルで挑む。明らかに己のPowerof Smileを熟知している写り方。船上BBQでもナイトクラブでも卒業式でも結婚式でもいっっっっつも同じキラースマイル。不自然。が、だ〜れも「何?この不自然な顔?」とは言わない。みんな「何来ても美人はキマル」とか、「美人だから一番目立つ」とかいった幻想に捕われる。従って、美人さんらは、結局自分のスマイルをアップデートしたり、時の流れやオケージョンに合わせて微調整する機会を与えられないままに、「勘違いなデフォルトスマイル」にしがみつき続けることになるのである。
 皆様、写真うつり向上の鍵は、「己に関する真実を直視すること」。良いお年を。
(原文まま)
*掲載号では校正、編集したものを発行*
2006年12月15日号(vol.136)掲載
by tocotoco_ny | 2006-12-13 15:23 | オンナの舞台裏
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