女同士というのは概して、自分が相手に与えたプライベートな情報に対して、相手のどの辺までの情報を引き出したかという計算を瞬時に、そして常に行っている。ほとんど意識下で。このバランス維持は友情を長続きさせる為の土台であり、特に出会って間もない段階では、この辺の裁量が相性決定する重要な要素であろう。
通常女は自分の生年月日(とくに年)以上の価値のある個人情報を相手に提供したら、その見返りを同性には期待する。見返りの返納期限は情報の種類と、それに個人がどの程度重きをおくかによる。生年月日なら即答が無難だろう。また、相手から相談事などで急接近されたら、こっちも持ちネタ(家計だのキャリアだの夫婦喧嘩だの)をそれなりにご披露する。これはほぼ義務であると同時に、双方の精神のバランスを保つ為の権利でもある。ただ、いくらバランスを保つといっても、なにも自分の言いたくないプライベートまで晒す必要はどこにもない。それなりにバランスがとれた装丁にして情報を提供すればよいのである。 例えば、赤裸裸な相談事を知り合ったばかりの人から受けたとする。自分は似たような経験はないし、知り合ったばかりの相手にこっちの事情を「うちもね〜」なんて気前良く提供する気にはならない。それに相手は苦労話をでっちあげて、こっちの内情を探るつもりかもしれないではないか!だからこう返す。「私の友達にも、ケースはちがうけど、こうこうこういった事情で同じ結果になった人がいたよ」ほらバランスがとれた。(かな?)お見事なイレギュラーバウンド。 自分のソーシャルサークルの範囲内で起きていることを話すことによって、相手がこちらへ向けたステップを7割がたお返しする。知り合って日が浅いのと、こっちが聞き出そうとしたわけでもないのに、相手から能動的に相談を持ちかけて来たという2点を考慮すれば、この程度で十分である。 女はこのような調整の積み重ねで距離を縮めていく。なかなか気の抜けない作業である。自分は5のインフォを与えてから相手の5を待ちたいのに、この人はいつもこっちが3までしか話してないのに口をはさんでくる。はたまた、こっちは3しか話したくないのに、彼女はいつも5、6までつっこんでくる。そして聞いてもいないのに自分の5、6も報告してくる。おまけに、Aさんにはここまで話したのに、Bさんが何も知らないのはまずくないかしら?などという応用問題も出てくる。そんな切磋琢磨を通して、女は「自分に合った人と環境」のモデルをカスタマイズし、同時に不得手な対象に接触したときの対処法もプログラムしながら大人になっていくのである。 女社会において、「天然」や「不思議ちゃん」といった珍種が、おもしろがられこそすれ、長期に渡り圧倒的に指示されることがないのは、ここのところでしばしば掟を破っているからである。(秋野マジェンタ) (原文まま) *掲載号では校正、編集したものを発行* 2006年1月31日号(vol.115)掲載
by tocotoco_ny
| 2006-01-29 08:00
| オンナの舞台裏
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