リアリティー番組もほとんど出揃って仕舞い、だんだん現実味も薄れて興味が無くなって来ていたのだが、ところがどっこい! A&E局が今夏から始めた「INKED」(毎週水曜午後9時)にまたしてもハマっている。ラスベガスにある「Hart & Huntington Tattoo Company」というタトゥー専門店でのエピソードなんだが、彼らの人間ストーリー云々というより、ボディに描かれるアート(刺青)の図版や技工に魅入られているというべきか……。
先月末、ローラ・ブッシュ大統領夫人が「若い人にはギャングなどと関わって欲しくありません。ギャングのタトゥーを入れたりしないほうが、就職しやすいですよ」と若者のタトゥーに苦言して話題となった。そのギャングのタトゥーとは、どんな図版を指していうのか分からないが、まあ、ラップスターやNBAなどのスポーツ選手が入れているガチャガチャした模様であることは確かだ。またローラ夫人は「顔や腕に刺青を入れていたら、人に見えるじゃありませんか。それでは雇用者は雇ってくれないと思いますよ」と語っていたのだが……。確かに今どきの刺青は、見えなければ意味がナイみたいに、どんどん露出傾向にあるようだ。そういや、今テレビによく流れているリーボックのCFで、NBAのアレン・アーバイソンが、何年にどこに刺青を入れたかをテロップ付きで紹介している。ホント、驚くくらい毎年ドンドン増え続けているアーバイソンのタトゥー、既に昔騒がれたデニス・ロッドマンを凌いでいる。ローラ夫人がいうところの「就職の心配」も、選手や芸能人たちには通用しないが、衣服などで隠れて見えない部分に入れている俳優などを含めると、ここ2、3年ですごい人口になっている(フェイクの人も多いらしいが)。ブリットニー・スピアーズが入れていることで、刺青とは無縁だった、ごく一般家庭のギャルズたちも、親に隠れてコッソリいれているようだし、ブラッド・ピットの彼女、アンジェリーナ・ジョリー も堂々と背中にドーンと入れているのでイケメン狙いの女性たちも、彼女に見習って?ベッドで彼氏に見せるために入れるのがトレンドらしい。 とにかく今や誰もが皆、どこかに入れている? となると、今度は消す商売が流行ってくるワケで……。そうそうビレッジ・ボイスでも「元カレの名前、消せます!」みたいな広告を最近見かけた。 ローラ夫人が、苦言ついでに紹介したロサンゼルスの青年育成プログラムの「ホームボーイ・インダストリーズ」(ドラッグ・ディーラーや、服役した青年などを更正)では、運営者かつ司祭のグレゴリー・ボイル氏が、額や首に刺青を入れている青年たちのために「普通に就職できるように」とレーザーマシンを導入して専門医を雇い、無料で刺青を消してあげているらしい。 それにしても、首筋や顔のタトゥーを痛々しく感じるのは私だけであろうか? 前述の番組「INKED」に出てくる人たちは、まあ、商売柄仕方ないと言えばそれまでだが、見事に痛々しい。通常、首筋といっても右肩から首にかけてか、左肩から首にかけてだが、この店のオーナーは正面のド真ん中、それも、のど仏を囲むようなカタチで、見たく無くても常に目に飛び込んでくる強引なタトゥーだ。彼らのクライアントにはビッグネームの芸能人も多く、図版もそれなりにイケてるのだが、どうも漢字だけはイタダケナイ。若い女の子たちが店にやってきて「福」とか「幸」の文字を入れて行くのだが、漢字を扱う同じデザイナーの一員として、そのヘタな漢字がどうしても許せない。付け加えていうならば、今のボディアーティストたちは、何でもカンでもエアブラシでうまく誤魔化していることが、ちょっと納得いかない。しかし刺青を入れる箇所だが、これにもトレンドがあるようで、手、それも指の表面や側面など細部に小さく入れて欲しいと希望する人が増えている。なるほど、指輪やアクセサリー変わり、といった感覚だろうか。小さいながらもインパクトは大だ。 誰しもデザイナーであるなら、死ぬまで消えない(消せない)アートを、生きた人肌のキャンバスに描きたいという願望があると思う。自分のアートが生きて(呼吸して)動いて、人目に付いてくれるワケだから、非常に魅力的な展示といえそうだ。 さて、ロッドマンの話に戻るが、刺青を後押しする団体がある。毛皮反対キャンペーンでファッション業界を常にビビらす動物愛護団体PETAがそれだ。今年の2月に同キャンペーンでデニス・ロッドマンを起用し、打ち立てたポスター(写真)が話題となった。このキャッチコピー、異常に洒落ている。「ミンクじゃなくて、インクで行こう」う〜ん、実にいい。ロッドマンは現役時代、ミンクのロングコートをよく着ていたが「デニス・ロッドマン基金」を設立し、またPETAの運動に賛同して自分が着ていたミンクコートをホームレスの人々へ寄付したりしたそうだ。 ちなみに、このポスターは同動物愛護団体のウエブサイト(www.petacatalog.org)でも1枚6ドルで販売されている。それにしてもロッドマン、11月2日放送のジェイ・レノのトークショー番組に久々に出演していたのだが、刺青は幾分見慣れた所為か、もっとキツイ奴らが画面に登場しているためか、特にスゴイという印象もなかった。しかし、顔面のピアス、それも両小鼻に突き立てて刺して留めていた(逆留め)ピアスが、妙に痛々しかったな。 Photo / Dennis Rodman: Think Ink, Not Mink Poster 2005年11月15日号(vol.112)掲載
by tocotoco_ny
| 2005-11-14 07:50
| toco流
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