vol.161/表紙「27年前を振り返るロス疑惑」

NO LIMIT FOR DOUBT MEN
■この2月「『ロス疑惑』三浦元被告をサイパンで逮捕」というニュースが報じられ、今、ネット上を賑わせている。かれこれ27年前の事件とあって、同事件を全く知らない世代の人たちが、ここアメリカに渡って、この地に暮らしているワケだ。同ニュースをネットで知って「?」と首を傾げる若者に、訳知り顔で過去を振り返りながら語り出すウザイ40〜50代になりたくはナイが、ここは一つ、老婆心ながら、tocotocoらしい見解(他とは違った見方)で、昔話に花を咲かせることにしよう——。
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懐かしい時代背景にみる「三浦さん」
「フルハムロード」は先見の明があった
■まず「ロス疑惑」とは、1981年8月13日、三浦和義元被告の妻一美さんがロサンゼルス市内のホテル「ニューオータニ」の自室で頭をハンマーで殴られて怪我をし、その3か月後、同じロス市内で夫妻が銃撃され、夫の三浦元被告が左足に重傷を負い、一美さんは頭に銃弾を受け、約1年後に死亡した……というのが大体のところだ。
 さて、この81年頃の日本の流行(ブーム)は、何と言っても「サーファー」だ。ミーちゃんハーちゃん皆がみな、アメリカ西海岸に憧れ「made in USA」のモノがバカ売れした時代。音楽もイーグルスやドゥービーブラザースなどが台頭する、通称「ウエストコースト」と呼ばれるサウンドがインであったという時代背景。兎に角「made in USA」ならセカンドハンド(中古品)の長袖Tシャツも高値で飛ぶように売れた。そうそう、当時このロングスリーブのTシャツというモノ自体が日本では珍しくて、前ボタンであれば中古でも1万円は下らなかったと思う。さて三浦さんの事件に戻ろう(現在、容疑者ではあるものの、2003年3月6日、最高裁で「逆転無罪」判決=写真上=となっているので「さん」付けで進めます)。
f0055491_144344.jpg■三浦さんは事件当時、衣類・小物雑貨の輸入卸販売「フルハムロード」(今も現妻の良枝さんが経営= Fulham Road Yoshie AGAIN=写真左)の社長で、数々のヒット商品を買い付け(アメリカ製)売上成績も順調だったという。f0055491_1423887.jpg
 今でこそ、単なる男性下着に成り下がった「Fruit Of The Room(フルーツ・オブ・ザ・ルーム)」のTシャツも(「Hanes/ヘインズ」も然り。当時の日本には良くも悪くも「グンゼ」か「BVD」くらいしか無く「CK」ことカルバンクラインが下着として定着したのは90年代に入ってから)、このフルハムロードが一手に買い付け日本で販売していたからスゴイ売上だったと思う。ちなみに「フルーツ・オブ・ザ・ルーム」Tシャツと言っても、素材(土台)にフルーツ・オブ・ザ・ルーム製の無地のTシャツを使用していただけで、Vネック仕様で左胸に「いかにもアメリカらしいプリント」(例えばナッツベリーファームとかコカコーラ、バドワイザー、クアーズなど、全く意味のないアメリカン商標ロゴ)が施してあるタイプ(参考写真右上=1980年撮影)。他にも当時「アヒルのランプ」(同右下)や「パームツリーのランプ」といったプラスティック製のお手軽な南国インテリアが街の喫茶店や長屋に住んでいる貧しい若者の狭い部屋にさえ飾られていた時代だった。この「アヒルのランプ」類も三浦さんはいち早く手掛けている。彼に先見の明があったことは確かである。

ペイズリー柄シャツにハンティングワールドのバッグ!
一転して他人の不幸を喜ぶ「日本人体質」が浮き彫りに
■さて、流行関連で言うなれば、三浦さんが’殴打事件での殺人未遂容疑で逮捕された時(1985年9月11日)、テレビ中継された彼のスタイルが「黒地にペイズリー柄のレーヨンのシャツとハンティングワールドのバッグ」。f0055491_14151031.jpgまさに、これが80年代前半を象徴する格好だ。今でもハンティングワールドが人気あるのかどうかは分からないが、当時はヴィトン、グッチなどを差置いて、堂々たる流行ぶり。男女両用、ライフ・ワランティ(生涯保証)がつくほど頑丈(実際は熱に弱くて表皮がグニュグニュと溶けた経験あり)というコピーに乗せられ、高値ながらも挙って小脇に「牙のない仔象のロゴ」が標されたクラッチバッグを抱え、夜な夜なクラブ(当時ディスコ)に繰り出す輩が多かった。しかし、三浦さんはショルダーバッグ。もうコレはめちゃめちゃ高くて(芸能人ご用達だった)一目置かざるを得ないスタイルでの逮捕劇であった=参考写真左=。
■事件当初、三浦さんは「アメリカ大統領」「カリフォルニア州知事」「ロサンゼルス市長」に抗議文を送り、植物人間と化している一美さんを、アメリカ軍用のヘリコプターで日本(東海大付属病院)へ移送する際にも、足を引き摺りながら舞降りて来るヘリに向かって自ら発炎筒を振り回し、担架で担ぎ込まれる一美さんに駆け寄り「かずみっ!かずみぃ〜」と連呼して涙する場面が1日中何度も繰り返し流された。この映像で日本のマスコミは挙って三浦さんを「美談の人」と書き立て、日本中の人々が三浦さんに同情し、ロスの治安の悪さを恐れ嫌った。
■一美さんが亡くなり、三浦さんの懐に保険金、約1億6000万円が入る頃「もう、美人の元モデル(現妻の良枝さん)と同棲中」「1億の豪邸は保険金で建てた」など、誹謗中傷する報道内容がドンドン紙面を賑わせ、連日、三浦邸前での密着取材でお昼のワイドショー番組は各局とも高視聴率を上げた。f0055491_14162020.jpg
 週刊文春が「疑惑の銃弾」をシリーズ連載(1984年1月26日号/同年1月19日発売/シリーズ第1回=写真右)し始めたころには、他の出版社も追随し、三浦さんの過去や私生活を競って暴き立て、事件は日を追うごとにエスカレートした。
 世間の目は一転。「美談の人」に同情して涙したことに「裏切られた」という思いと、金持ちでイケメン(現在の写真をみると、その頃の面影もなくなっている=驚くべき血筋!叔母であった女優の水の江滝子にも酷似してきた=写真下)、美人の愛人、会社経営も順調という三浦さんの身の上に「嫉妬心」を抱き「奴は悪人!」として認識するようになる。他人の不幸を喜ぶ日本人体質。この頃からだろう、日本のお昼のワイドショーが過激になり出したのは……。f0055491_1417311.jpg

殺人罪の時効がないアメリカでの評決は?
NO LIMIT FOR DOUBT MEN「GUILTY or NOT GUILTY?」
■突如、降って湧いたような27年前の同事件。日本国憲法では無罪判決となった過去の事件について、再び刑事責任を問われることはないという「一事不再理」を掲げているが、海外で事件が起こり、その国の法律で裁かれる場合は、この一事不再理は適用されない。また日本では殺人罪の時効(25年)があるがアメリカには時効がない。また同事件が起こったカリフォルニア州の「計画的な殺人を含む第1級殺人」の最高刑は、13州が既に廃止にしている「死刑」を、現在でも施行している。今後、どのような展開、そしてどんな結末が待っているのか全く予測不能だが、日々更新されるロス側のニュースを知る限りでは「有罪」の評決が下る可能性も、0%だとは言い切れない。

*「疑惑の銃弾」事件の詳細を知りたい人は疑惑の銃弾へ。
2008年2月29日号(vol.161)掲載
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by tocotoco_ny | 2008-02-28 14:20 | 2008年1、2月号
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