カテゴリ:2008年4月号( 2 )

vol.165/表紙「Tibet will be free」

今夏、北京五輪は無事に開催されるのだろうか?
戦場と化す今年の「熱い8月」

7th TRIBECA FILM FESTIVAL——日本人女性監督が手掛けた1本
f0055491_10443598.jpg●8月に開催される北京オリンピックのトーチリレー問題など、今、世界中で最も話題となっている渦中の「チベット」を扱った日本の女性新人監督、樂眞箏(ささ・まこと)のドキュメンタリー作品「Fire Under the Snow」が、5月4日まで開催中の「第7回トライベッカ・フィルム・フェスティバル/TRIBECA FILM FESTIVAL=TFF」に出品されている。内容は政治囚として中国の刑務所に33年投獄されていたチベットの高僧、パルデン・ギャツオ(Palden Gyatso)の服役中の体験を綴った本「雪の下の炎」(翻訳/檜垣嗣子、1998年新潮社発行=写真右)を映画化した話題の1本だ。f0055491_1057045.jpgまた同映画祭では、ドキュメンタリー「The Dalai Lama: Peace and Prosperity」も上映される(トライベッカ・フィルム・フェスティバルに関する詳細は、コラム「tocoloco」参照)。
祖国と自由を愛する最もパワフルな男——パルデン・ギャツオ
●「雪の下の炎/Fire Under the Snow」の原作者、高僧パルデン・ギャツオ(写真左)についてだが、彼はダライ・ラマ14世ほど世に知られてはいないものの、同著は19か国語に翻訳され、チベットの独立を訴える講演を世界20か国以上で行っている。また2002年、当局に爆破事件に関与した容疑で拘束されている高僧トゥルク・テンジン・デレクの解放を求めて、高齢(当時71歳)ながらも「2か月間のリレーハンガーストライキ(2004〜05年)」を敢行するなど、祖国と自由を愛する最もパワフルな僧侶として評価されている。彼は国連を始めとする様々な国際フォーラムの場で、中国支配下で受けた自らの体験を語ってきた。その体験とは——。f0055491_10462185.jpg
 パルデン・ギャツォは1933年、チベット中南部シガツェの東方パナムに生まれた。彼は7歳で門を叩きガドン僧院の僧侶となったが、26歳の時に政治犯として捕らえられ33年間もの長い間服役。その服役中の体験を綴ったのが「雪の下の炎」である。WEBサイト「チベットハウス」には彼が受けた拷問についての詳細が記されている。
中国は86年、国連の拷問禁止条約に調印している——しかし……
●WEBサイトから要約した証言内容:「中国人は拷問の道具として使うための手錠をいくつか作り出した。『親指錠(写真右)』は親指を背中で括りつけるためのもので、それから囚人は尋問用の棒に天井から吊り下げられる。そのままの状態で、拷問者は火にあぶられ、赤唐辛子をくべられることもある(赤唐辛子を火で焼くと、すさまじく弾け散り、その煙で眼が痛み呼吸が出来なくなる)。f0055491_10472093.jpgパルデン・ギャツォは、天井から吊り下げられた状態で熱湯を浴びせられたと証言している。他にも様々な重さの『脚枷(足かせ)』も使われ、それをつけたまま重労働をさせられる。囚人たちはカーペット工場での労働を可能にするため、痛みに耐えながら地面に穴を掘らなければならなかった。最も苦痛を与える錠は『黄手錠』と呼ばれる自分を締め付ける手錠で、これは時間が経つごとにキツクなって来るもので、内側には鋭い歯がついており、それが手首に突き刺さって傷つけ、出血する。黄手錠をつけられると手首のまわりに水ぶくれができ、炎症をおこして火傷のよう傷跡がん残る」
f0055491_10491419.jpg 中国政府によって行われた拷問の数々は、国連の拷問禁止条約(拷問とは肉体的、精神的に大きな苦痛を伴う行為が、意図的に、個人に与えられること)に違反するものである。中国は86年、国連の拷問禁止条約に調印している。しかし調印以降、拘留・監禁中に拷問死したチベット政治囚は確認されているだけでも60人にも上るという。写真はパルデン・ギャツオが解放された時に持ち出した拷問用具
当局はチベットへの弾圧を強めていくのだろうか——危ぶまれる「北京五輪」
●「チベット」あるいは「ダライ・ラマ」について、一般的によく知られているのは、ブラッド・ピット主演のヒット作映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(ジャン・ジャック・アノー監督/97年作品=写真左上)だろう。同作品は、アイガー初登頂で知られるオーストリアの登山家、ハインリッヒ・ハラーの自伝を映画化したもので、彼が14歳のダライ・ラマ14世と出会い、家庭教師となって14世と一緒に過ごした7年間の交流が描かれている。同映画は、中国人民解放軍によるチベットの軍事侵略や、紅軍兵士がチベッタンを虐殺するなどの演出がされていたとして、当然、中国では上映禁止となった。f0055491_1050737.jpgまた、監督および主演のブラッド・ピットやデヴィッド・シューリスは、生涯中国への入国を禁止されているという。また以外と知られていないのが「セブン・イヤーズ・イン・チベット」と同じ年に公開された、巨匠マーティン・スコセッシ監督が手掛けた力作「クンドゥン」(97年作品=同左下)だ。クンドゥンとは御前様を意味し、チベッタンは彼をダライ・ラマとは呼ばず、クンドゥンと呼ぶ。同作品は、2歳の時にダライ・ラマの生まれ変わりとして見出された14世が、中国の侵攻によってチベットが修羅場と化していく17歳までの数奇な人生を描いたもので、98年度のアカデミー賞の4部門でノミネートされた。当然、その頃、ハリウッドと中国間で公開前から様々な駆け引きが展開された。中国は「クンドゥン」の配給会社ディズニーに対して、公開すれば今後ディズニーは中国市場を失うだろうと釘をさし、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」については、登山家ハインリッヒ・ハラーは「ナチの信奉者」などとの情報を流した。しかしハリウッドはこれらの圧力に屈することなく両方を公開したのである。これらの映画公開から10年、北京五輪を夏に控え国際社会がまた注視する中、中国は依然チベットへの弾圧を強めていくのだろうか——(ダライ・ラマに関する詳細は、コラム「toco流」参照)。
過熱する反仏感情——その矛先は、いずれ日本に向かう気がする
●現在、緊張感が深まるフランスと中国間で、また今月21日、パリ市議会は「ダライ・ラマ14世を名誉市民とする」ことを賛成多数で可決した。14世の他にも、中国当局が今月3日に懲役3年6月の実刑判決を下した人権活動家の胡佳氏に対して、同様の名誉市民の称号を贈った。中国で反仏デモやフランス製品の不買運動が広がる中、さらに人民の間で反仏感情が過熱するだろう。今、人民の矛先がフランスに向けられているが、それらが、いつ日本へ向けられてもおかしくない。そもそも、反日感情をむき出しにしている若い人たちが多い中、ギョーザ問題や中国商品(製品)不買運動などを考えると、日中両国間がギクシャクするのも時間の問題であろう。
個人でできるチベット支援——知らなかったことを知るために
f0055491_10511751.jpg●ここニューヨーク市内には「チベット」をもっと知るための環境が整っている。市内15丁目にある「TIBET HOUSE GALLERY」では、5月1日(木)から7月1日(火)まで写真2人展「Vanishing Tibet」が開催される。写真家、ダニー・コナントとキャサリン・シュタインマンの2人撮ったチベットの数々が展示される(写真右)。同ギャラリーでは様々な美術品なども常設されており、WEBストアには高価ながらも、かなり芸術性が高いアクセサリー(写真左上=480ドル)なども販売されている。f0055491_10585836.jpgまた、14丁目に本部がある「STUDENTS FOR A FREE TIBET」のWEBストアには学生らしいTシャツやトートバッグ(同左下=18ドル)、ステッカーなどが販売されている。どの団体もチベットへのドネーションを募っているが、商品購入という協力法もあるので興味を持たれた人は、一度足を運ばれるか各WEBサイトをチェックして下さい。

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■今回の特集で参考にした資料先一覧(以下の通り)
■ダライ・ラマ法王オフィシャルサイト=www.dalailama.com
■ダライ・ラマ法王日本代表部事務所=〒160-0022 東京都新宿区新宿5-11-30 第五葉山ビル5階、Phone:03-3353-4094、Fax:03-3225-8013、WEB:www.tibethouse.jp
■スチューデント・フォー・ア・フリーチベット=602 E. 14th St., 2nd Fl、Phone:212-358-0071、WEB:www.studentsforafreetibet.org
■チベット・ハウス・ギャラリー=22 W. 15th St.,、Phone:212-807-0563 、WEB:www.tibethouse.org
■インターナショナル・キャンペーン・フォー・チベット:www.savetibet.org
2008年4月25日号(vol.165)掲載
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by tocotoco_ny | 2008-04-24 10:53 | 2008年4月号

vol.164/表紙「NEW YORK COMIC CON」

戦後の日本を救ったマンガ!今後の発展と未来の役割は何?
手塚治虫がいなければ、日本の歴史は違っていた
f0055491_4371656.jpg■4月7日は鉄腕アトムの誕生日である。今年は、その「アトム」を産み出した手塚治虫氏の生誕80周年になるため、様々な記念イベントが各地で開催される。「鉄腕アトム」「火の鳥」「ブラックジャック」など、数々の傑作マンガを残した偉人、手塚治虫氏。彼が戦後の日本に残し伝えた「夢と希望の未来図」がもしなかったら、戦後の日本の発展は、今とは違っていただろう……と、私は思う。それは日本マンガ界だけの話ではなく、戦争に破れて荒んだ生活を余儀なくされていた当時の日本人の「心」に、明日への希望を見出す何かを育て、何かを芽生えさせたハズである。f0055491_4375335.jpg庶民の「貧しいながらも希望を胸に、必死に生きる思い」が明日への活力となり、戦後の復興を支え、今の日本を築くに至ったと言えるだろう。21世紀の今日、日本の代表文化である「マンガ」がここまで発展した経緯には、少なからずも手塚氏に影響を受けた後世の数々の作家たちによるものであることに間違いはない。そのマンガがアニメと呼ばれるようになり、本や雑誌などの紙媒体から、動き出す「動画」へと移り変わる現代。今や、どこの国の発行物であろうとも、即、翻訳されて動画サイトに流れ出す時代である。もはや言語は必要とせず、絵や動き(画像)、音(バックミュージックや効果音、吹き替え)で、その中身を訴えかけるグローバルな「教材」と化した。
 先月、ニューヨークでも拉致被害者である横田めぐみさん=拉致当時(13)=の写真展が行われ、ニューヨーカーたちにも拉致問題への理解を訴えた。その横田めぐみさん家族の救出活動を描いたドキュメンタリー漫画「めぐみ」が平成16年12月から「漫画アクション」(双葉社刊=写真)で連載され、現在では単行本としても出版され発行部数も延ばしている。f0055491_439380.jpgこれら外交問題に関わるストーリーを漫画にすることによって、今まで拉致問題に無関心だった若者にも強くアピールし、理解促進にも効果を促し、政治的な問題にも目を向けさせる結果に繋がった。その漫画「めぐみ」が政府(拉致対策本部)の手によって、さらにアニメ化され、教育現場の「教材」となってインターネット上で無料ダウンロードして視聴できるようになり、DVDで各地の自治体や在外公館などに無料配布されているという。政府が漫画をアニメ化する……とは異例なことだが、今の時代は、そういう時代である。いかに、若い人たちへアピールできるか否かは今や「動画」にかかっていると言えるだろう。
 そういや日本に一大韓流ブームを巻き起こした韓国ドラマ「冬のソナタ」も、最近日韓共同製作でアニメ化され、ドラマで主演したヨン様ことぺ・ヨンジュンが吹き替え役を務めるという。そうかと思えば、今、チベット問題で8月のオリンピック開催が危ぶまれている中国では、日本アニメの何に「脅威」を感じたのか先月22日、ゴールデンタイムに「海外アニメの放映を禁じる措置」をさらに1時間強化させ、5月1日からは午後5時から午後9時まで(従来は午後8時まで)延長するらしい。一応「自国のアニメ産業の保護」としているが「自国の若者へ、日本文化の影響を懸念する政府の方針」という声も大きい。現在中国では、国産アニメと海外アニメ(主に日本アニメ)の放映比率は、国産7割を下回らないよう定めているというが、意に反して日本アニメが断トツで人気が高い(高視聴率)というのが現状のようだ。
 中国が脅威に感じ取る「日本のアニメ界」は、そんな全世界の期待をも一身に背負って、常に第一線を突き進まなけらばならない環境にあるようだ。またご当地、本家の日本においても、ここ数年、TVドラマ界を牽引している作品は、原作が漫画に基づくものである。次々と漫画がドラマ化される昨今、次のヒット作を生み出そうと、今や業界マンは夜を徹してマンガを読みふけることに必死である。
 さて近い将来、従来の選挙のカチタもすべてアニメに化して、立派な人物像に誇張された候補者(キャラクター)の動画で、公約をインターネット上でアピールする時代がすぐそこまで来ているのかも知れない。今、選挙権を持たない若い世代にも選挙に関心を持つよう促す対策として、善し悪しはともかく、アニメ化するのが最も手っ取り早い方法である。戦後のニッポンを先進国へと導いた「マンガ」が「アニメ」へと変わっていった60年余、今後も熟成しつつ、さらにアニメがどう変化していくのか——漫画とともに育った私の世代では、それを見届けることはできないかも知れない。しかし、手塚治虫氏が謳ったように、そこにも「明るい未来」が待ち受けているような気がする。
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Anime!Manga!Cosplay!J-Pop!Yatta!
日本のコンテンツが花開く、春1番の恒例イベント
■ヤッタァー!ヤッタァー!(Yatta!)が昨今のアメリカでの流行語である。これはNBC局の大ヒットドラマ「HEROES」の日本人役ヒロ・ナカムラが叫ぶセリフから端を発しているのかも知れないが、そこから派生して、日本人または日本人的イベントというと、必ずこの「Yatta!」が、意味を成さないまま文中(作品中)に添えられるお決まりの言葉となった。
 さて、日本のアニメやゲームが海外でも人気を博して数年になる。日本コンテンツのファンたちが集まる「オタク的イベント」も世界各地で開かれ、ここアメリカでもいよいよ「OTAKU」が本格的に始動している。f0055491_4405140.jpg
 毎年数万人規模の参加者を集める、東海岸では最大のオタクイベント「NEW YORK COMIC CON」が、今年もまた4月18日(金)から20日(日)までの3日間、市内ジェイコブ・ジャビッツ・センター(Jacob K. Javits Center/655 W. 34th St.)で開かれる。アメリカでのオタクイベントは東西にかかわらず、本家の日本とは異なり「コスプレ(Costume Play=Cosplay)」が中心と言われ、大学のサークルなどが行うような小規模イベントを含めると、週1回はどこかでコスプレ大会が開かれているという。しかもアニメファンでなくても、単に「かわいい衣装を着たい」という理由でコスプレ大会に参加する人も少なくないらしい。
 これらアメリカでのOTAKUイベントには日本の人気アーティストやクリエイター、アニメ監督、声優たちが参加するのが通例となっており、今年もアニメ「ガンダム・シード(Gundam SEED)」のテーマ曲「INVOKE」を歌っているT. M. Revolution(写真右)が、19日(土)午後9時から同会場特設ステージ「IGN Theater」(全3000席)でライブを行いサイン会(金曜:午後3時、土日曜:午前10時から/Booth1065)なども開催される予定だ。入場料は$30(金、日)、$35(土)、$45(3日間パス)。
NEW YORK COMIC CONの詳細はオフィシャルサイトwww.nycomiccon.comまで。
■ヤフーのみんなの検定に掲載されている「アニメ鉄腕アトム公式検定」minna.cert.yahoo.co.jp)には初級、中級、上級などがある。腕試ししたい人は要チェック!
2008年4月11日号(vol.164)掲載
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by tocotoco_ny | 2008-04-10 04:41 | 2008年4月号