vol.30/無名の人々<aloe352>

■おススメしないけど
 なじみのレストランの本日のスペシャルメニューにサンマの文字を見た。思わず目を疑う。
 サンマと言えばここアメリカでは肩身を狭くしている青魚の類いである。魚に淡白な味を求めるこちらの人にとって、青魚は魚臭くて耐えられないのだろう。焼いたサバや炙ったイワシを美味そうに頬張る私を、顔をしかめながら見つめるこちらの人々を何人も目撃して来た。
 その青魚の代表格サンマが、日本食レストランでもないこの店で扱われるとは珍しい。しかし、その時の旬の食材を仕入れて毎日のメニューをこしらえるこの店で、初秋の今、サンマに目が向けられたのは当然と言えば当然かもしれない。
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 嬉しさではやる心を落ち着かせメニューを更に読み込む。何やら柑橘果汁でサンマをしめているらしい。しめサバならぬしめサンマというわけか。焼きサンマでないのが残念だがしめた青魚も大好きだ。よほど新鮮なサンマが入荷したのだろう。そしてサンマの上には水菜を乗せているという。サンマと水菜。日本を意識したメニュー作りに敬意を示すためにも注文決定である。

 だが、ここで一つ問題がある。このサンマのメニューは前菜なのだ。小皿と言わず、この際ぜひ大皿で食べてみたい。ニ皿注文しようか。しばらく悩んで私はなじみのウェイターに相談を持ちかける。すると彼は一瞬言葉に詰まって言った。
「オ、オッケー。そんなにサンマが好きなら厨房に行って聞いてみるよ。多分主菜サイズにできると思うけど。」
 そそくさと彼は厨房に引っ込んだ。かなり驚いている様子である。挙動不審めいている。普段あまり感情を表に出さずにサービスに徹する彼にしては珍しいことだ。明らかに彼はサンマが嫌いな様子である。
 数分後、彼がテーブルに戻って来た。
「主菜サイズでお出しできます。ただ、マリネなので冷たいですし、あくまで前菜としてお出しする事を意識して作られたメニューです。それでも良ければ主菜サイズでお作りしますけど。」

 本当に彼はサンマが嫌いらしい。いつもこちら側の言う事を否定しない人の良い彼が、「警告」の雰囲気をもって言って来た。言葉の端々に「ボクはおススメしないよ?」そんな意図が見え隠れするのだ。それでもいいのだ、私はサンマが好きなのだと、サンマを主菜サイズで注文した私からメニュー表を受け取りながら彼は言った。

「オ、オケー。ご注文うけたまわりました。ワァオ。」
 ワァオって。彼は本当にサンマが嫌いらしい。

 出てきたサンマは、小粒であったがいかにも新鮮で、それを丁寧に漬け込んであり新鮮な水菜とともに食すと美味しかった。一枚一枚丁寧に並べられたサンマの開きを口に運ぶ度、広がる青くささが懐かしく一気に平らげた。
 サンマのいなくなった私の大皿を見てウェイターはまた一瞬言葉に詰まって言った。
「ワ、ワァオ。グッジョブ。」
 シンジラレナイ。そんな表情を浮かべながら彼は皿を片付けた。
 彼は本当にサンマが嫌いらしい。そんな彼には、私もサンマをおススメしないから、ダイジョウブ。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
*同コラム作者のブログ「今日見た人、会った人」にもお立ち寄りください。
2008年11月28日号(vol.179)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-24 23:49 | 無名の人々

November, 14. 2008 vol.178

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vol.178/表紙「OBAMA de GIFT 2008」
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:55 | バックナンバー

vol.178/表紙「OBAMA de GIFT 2008」

OBAMA de GIFT 2008
■FRB(連邦準備制度理事会)が、どんな秘策を練ってしても、どうにもこうにもならない株式市況。「ドル安」が続投する中、当然、先行指標であるクリスマス商戦も期待薄感が漂うアメリカ「合衆国」——。消費が極端に冷え込み深刻な事態となっているアメリカ経済だが、今月末にはいよいよ「クリスマス商戦」が始まる。サンクスギビングデーの23日金曜日、通称「ブラックフライデー」は年間小売り売上高の4分の1を占めるだけに、大手量販店の力の入れようはタダゴトではない。昨年、早朝4時から開店させド根性を見せたKOHL'Sに追随し、今年はどこも皆、早めの開店に躍起となっている現状だ。さて、こうした量販店が大不況で泣いている中、現在、独り勝ち状態で好調ぶりを発揮しているのは「ウォルマート」Walmart1店と言われる。通年、大型ショッピングモールやブランドを扱う小売店で物色していた消費者が、こぞってワンランク落とし「安かろう悪かろう」的なウォルマートへ足を運び、やや安め、かつ、さほど見栄えも衰えない商品を探し求める傾向にあるようだ。ひと昔前なら「ウールワース/Woolworths」で物色するといったところか……。また、数年前から言われ始めた「サイバーマンデー」(ブラックフライデーを含む週末明けの翌月曜日)。この月曜日はインターネットを通じて「最安値の商品を購入する」人々のために設けられており、年々、消費者の「サイバーマンデー化」は上向きである。
 さて、これら歳末商戦に向けて、2008年のtocotocoイチオシ・ギフトだが、今年ならではの商品を「OBAMA de GIFT」と名付けて紹介したい。選挙熱が未だ覚めやらぬこの時期、オバマ次期大統領誕生を記念して、これからの明るいアメリカに期待したい。
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■2009 Barack Obama Presidential 14 month Calendar $17.99(送料&税金別) www.projecthope08.com
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f0055491_6411061.jpgf0055491_6424520.jpg★「第44代アメリカ大統領」となるオバマ次期大統領のオフィシャルカレンダー。中味はアメリカのカレンダーなので、日本で暮らしてる人へのギフトとしては、祭日や休日などが異なるため、少々、日常生活で使用するには不便かも知れないが、まあインテリアとして雰囲気で飾るカレンダーとしては1年中楽しめそうだ。しかし、他国民でありながら、アメリカ大統領のカレンダーを部屋に飾るという趣向(発想)は、世界中どこを探しても、このオバマ氏ならではの商品かも知れない。

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■ 'HOPE' Poster $45.00(送料&税金別) www.projecthope08.com
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f0055491_6444390.jpg★今回の大統領選で使用されたオバマ氏のポスター。Tシャツになったりと街のアチコチで見かけられたモチーフだが、今回の選挙戦でオバマ陣営は、著名なアーティストと契約して「Artists for Obama」と銘打って、色んなポスターを起用し販売している。もちろん参加したアーティストたちは皆、熱烈なるオバマ指示者だ。「YES! OBAMA」に名を連ねるアーティストは、ランス・ワイマン(Lance Wyman)、クイ・ボルヒェルト(Gui Borchert)、ジョナサン・フェフラー(Jonathan Hoefler)、ロバート・インディアナ(Robert Indiana)、ラファエル・ロペス(Rafael López)、ルウ・ストボール(Lou Stovall)、アンター・ダヤル(Antar Dayal)、スコット・ハンセン(Scott Hansen)、シェパード・フェアリ(Shepard Fairey)の9人で、同ページに掲載、販売されていたポスター全ては、既に完売となっている。言わば、そのほとんどがコレクターたちが喜ぶ限定品だ。
f0055491_645288.jpg但し、この若手のポップアーティスト、シェパード・フェアリの作品「HOPE」(24×36インチ)ならまだ手に入る。数量に限りがあると思われるので、欲しい人は早めにリーチされることをおススメします。ちなみに、今回の特集号の表紙でパロった元の作品は、ロバート・インディアナが制作した限定150の作品「Hope」(シルクスクリーン=写真下)で、販売されていた価格は1枚2500ドルだ。

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■Marc Jacobs's Obama '08 Button Tote Bag $75.00(送料&税金別) store.barackobama.com
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f0055491_6472064.jpg★日本人が泣いて飛びつきそうな限定トートバッグ。なんとマーク・ジェイコブス(MARC JACOBS)が手掛けたオバマ仕様のトートバッグだ。オバマストア「Runway To Change」のカテゴリーには錚々たる著名人が参加して制作したグッズが多数販売されている。このトートバッグはキャンバス地でやや小さめサイズの縦長で、ワッペン風モチーフで表面には「OBAMA '08」裏面には「MARC JACOBS ♥ OBAMA '08」のマーク入り。この商品ならまだ間に合うので欲しい人はお急ぎください。

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■Juicy Couture's Dude, Where's The Hope Ladies Fine Jersey T-shirt $60.00(送料&税金別) store.barackobama.com
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f0055491_648967.jpg★どこよりも早く過去に幣紙tocotocoで紹介した人気のギャルズブランド「ジューシー・クチュール」(Juicy Couture)もTシャツで参加している。アメリカで手堅くヒットを続けている同ブランドは、ニューヨークでもマジソン街に店をオープンさせ、珍しく好調な人気ブランドだ。昨年、日本進出を実現させた「アバクロ」こと「アバクロンビー・&・フィッチ」(Abercrombie & Fitch)に皆が飽きてしまう頃、日本でのネクストは、決してオープン前日の早朝から並んで買い求める「H&M」などではなく、このジューシー・クチュールが来るべきだろう。Tシャツの後ろには「OBAMA Rules!」とプリントされ、これを着用してどんな規則、規定を死守するかはちょっと首を傾げるところ。

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■Shawn "Jay-Z" Carter's CHANGE Black T-shirt $60.00(送料&税金別) store.barackobama.com
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f0055491_6491278.jpg★同じ人種でオバマ氏を応援しないワケがナイ、ラッパー&ヒップポッパーたち。今回の選挙戦で、彼らの異常なるフィーバーぶりは想像をはるかに越えた。ブラック・エンターテインメント局「BET」では連日連夜、オバマオバマの大合唱。同局十八番ヒット番組「106 & Park」中で、観るからに選挙権のナイ10代たちにも猛烈にアピールしていた。そんな彼らの最も憧れの対象である「Jay-Z」がデザイン参加したTシャツが「CHANGE」にVOTE(チェック印を入れた)したプリントが施された作品だ。
f0055491_6501887.jpg同じく彼女のビヨンセ(Beyoncé)がデザイン参加したTシャツ「Beyoncé & Tina Knowles's Obama is Change Ladies Fine Jersey T-shirt」(価格$60.00/送料&税金別=写真)にも「CHANGE」の言葉が起用され可愛くプリントされている。この2枚でのペアルック、イケてるようなスベっているような、微妙な感じだが、カップルへのギフトにいかがでしょうか? 
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 また、アーティスティックなプロデューサー、ファレル・ウイリアムス(Pharrell Williams)のデザインTシャツ「Obama Stands Out From the Crowd T-shirt」(価格$60.00/送料&税金別=写真)も販売されている。彼のロゴマーク的「顔イラスト」をもじった今回の限定品、ファンでなくても欲しくなるクールな1枚だ。他にもTシャツに参加している著名人にはラッセル・シモンズ(Russell Simmons)、ベラ・ワン(Vera Wang)など多数いる。

★兎に角、これらのオフィシャルサイトやオバマストアには、子供、赤ちゃん用のグッズから家庭用品のカップやアクセサリーまで様々な商品が限定で売り出されている。今年から来年に向けて、まだまだ話題となるオバマズ・グッズ!今年のサンクスギビングは共和党支持者以外へのギフトに喜ばれそうだ。

2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:40 | 2008年11月号

vol.39■tocoloco local news

P.ディディが2000万ドルでアパレルブランド「Enyce」を買収
彼のネクストターゲットは不況で泣いている車関連企業か?

f0055491_6353758.jpg●4年に1度、必ず「選挙に行けよ!」とあらゆるメディアに頻繁に登場するアーティストと言えば、ご存知「P.Diddy」(P.ディディ=写真左)だが、起業家の彼が手掛けるアパレルブランド「Sean John」(ショーン・ジョーン)に続いて、今秋、新たにストリートブランド「Enyce」(エニーチェ=同右)を買収した。
f0055491_6362897.jpgEnyceはヒップホップブランド「Mecca」(メッカ)のデザイナー(Evan Davis、Lando Felix、Tony Shellman)たちが独立して1996年に立ち上げたブランドで、一時はラッパーたちの間で人気が高かったブランドだが、同様のストリートブランドが氾濫する中、Enyceは生き残りをかけて、2003年「Liz Claiborne」(リズ・クレボーン)に売却されていた。しかし、Liz Claiborneでは自社のブランドイメージに合わないとして、Enyceを売りに出していたところ、Diddyが半年かけて交渉を行い、このほど買収にこぎ着けたという。一部報道されている内容では、買収額は2000万ドルに達したとのことだ。今回の買収劇でDiddyは「現在のアメリカ最悪の経済の状況を、冷静に判断した上で決断したんだ」と話している。さて、今回のこのシナリオ、吉と出るか凶と出るか……神のみぞ知るところだ。

f0055491_637173.jpg ちなみに意外と知られていないのだが、そこそこ好調な彼のアパレルブランド「Sean John」では、ウエアやフレグランス、アクセサリーの他、なんと車の「ホイール」もラインナップ(同左)している。とかく、ラッパーたちは車のチューンナップにご執心だが、そんな彼らの要望に応えるかのごとくピカピカのホイールを売り出し中だ。そうなると、彼のネクストターゲットは不況で泣いている車関連企業か? 数年後にはSean Johnブランドのタイヤを始め、車そのものも登場するかも知れない。尚、彼は今夏限定のオフィシャルドリンク「レモネード・ヴォッカ」も手掛け、ファンション関連では、ニューヨーク生まれの若手デザイナーブランド「Zac Posen」(ザック・ポーセン)のオーナーでもある。
■「ENYCE」のオフィシャルサイト=www.enyce.com
■「Sean John」のオフィシャルサイト=main.htmlwww.seanjohn.com
■「P.Diddy」のオフィシャルサイト=www.diddy.com
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:35 | tocoloco

vol.176/I live for this.<黒須田 流>

 元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎が10月26日タイ・バンコクで復帰戦を行なった。なぜ、日本ではなくタイなのか?というと、日本ボクシング協会(JBC)の規則では健康上の理由等から37歳になると自動的にライセンスが失効する(一部の特例はあるらしいが)。つまり、現在38歳の辰吉選手はプロボクサーとしてリングに上がり、試合をすることが日本国内では許されないのである。
 さて、試合は辰吉選手が2RTKO勝ちを収めたのだが、試合後、JBCは今回の復帰戦に関与したタイ側のジムの会長に事情聴取を行い、今後タイ国内ではJBCライセンス保持者以外の試合禁止を要望したというのだ。しかも要望とは名ばかりで、もしJBC側の意向に応じない場合には同ジム所属選手の日本での試合出場を認めないなどの制裁措置も含まれているので、ほとんど脅しにちかい。これによって、辰吉選手の現役続行の道が断たれる可能性がますます高くなった。辰吉選手はボクサーとしては致命的とも言える網膜剥離を克服して世界王座に返り咲いた男である。しかし、王座から陥落して既に10年が経ち、年齢的にも肉体的にもピークが過ぎていることは本人が一番よくわかっているはずだ。それでも、彼は現役にこだわり続ける。世界の頂点に立ち、地位も名誉も手に入れた男がボロボロになってまで闘おうとする。ヘタすれば死ぬことも有り得るのに彼をそこまでリングへと駆り立てるのは何なのか、私のような者には到底理解できない。現役か引退か周りがどうこう言う筋合いではないだろうし、自分の人生を自分で決められないのもおかしな話である。ただ、本人が命を削る覚悟でやりたいのなら納得するまでトコトンやらせてあげたい。そして、一ファンとして最後まで彼の闘う姿を、生き様を見届けたいと思う。
 それは無責任だという意見もあるだろうが、では、人道的なもっともらしい意見を述べたり、生きてさえいれば良しとする考え方がはたして責任あると言えるのだろうか。
 誰にでも「I live for this(このために生きている)」という瞬間、あるいは「これをしている時に『生』を感じる」というものがあるのだろう。それは、労働の後のビールであったり、子供の笑顔であったり、家族団らんのひと時であったり、大切な人と過している時間だったり、美味しいものを食べている時であったり、面白いマンガを読んでいる時だったり、アダルトビデオを観ながらオナニーしている瞬間だったり、ゴルフをしている時だったり、舞台に立っている時だったり、仕事や研究に打ち込んでいる時だったり……その「時」や「瞬間」は人によって様々なのだろう。辰吉選手にとってはたまたまそれがリングに上がり、試合をすることなのかもしれない。
 戦争を放棄し、経済的にも恵めれ、世界一の長寿となった日本人はあらゆる面で過保護になり過ぎているような気がする。長生きを否定するつもりはないけれど、人命が何よりも尊いという価値観が万人に通用するとは限らない。誰もが「死ぬ時はポックリ逝きたい」みたいなことを言う。それは寝たきりになったり、誰かに迷惑をかけてまで生きていたくはない、という意味なのだろう。
 幸福の基準はそれぞれである。日本国憲法でも幸福追求権(第13条)は認められている。もちろん幸せのためなら好き勝手やっても良いというわけではないが、世の中には健康で安全に平和に暮らすことに幸せを感じられない人だっているのだ。だからとて命を軽んじ、死を奨励するつもりもない。むしろせっかくの命を自ら絶つなんて勿体ないと思う。たとえ周りからすれば取るにたらないような事でも、自分が楽しい、面白いと感じるものが何か一つでもあるなら私は命の続く限り、惨めに這いつくばってでも生きてやる。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
*お知らせ* 同コラムのバックナンバーは「アンダードッグの徒」のオフィシャルサイトの書庫に第1回目から保管してあります。お時間のある方は、そちらへもお立ち寄りください。
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:34 | アンダードッグの徒

vol.165/景気対策に必要なものは祭だ<友野コージ>

 まもなくアメリカ大統領選の結果が出る。アメリカの大統領選は、単に一国の大統領を決める手続きという意味合いを遙かに超えて、1年以上かけて行われる壮大な祭だと思う。祭が祭たる必要条件は、そこに「日常を忘れさせる熱狂」があるということであろう。僕は常々、人間が集まる共同体には「物語」と「祭」というものが欠かせないと思っている。社会が存続していくために必要なことが「物語」、社会の現状を打破するために必要なことが「祭」だと考えている。アメリカのことはよく知らないが、アメリカという国が存続していくために必要な物語がキリスト教で現状を打破するために必要な祭が大統領選なのではないかと見ている。
 日本は現在、アメリカからはじまった金融危機のあおりを受けて株価は急落し円高が進み、それによって銀行や保険会社の資産が激減し輸出企業が打撃を受け、実質経済が不景気に突入していると言われている。そんななか麻生内閣では、まずは何よりも景気対策を優先すると宣言し、20兆以上の財政出動を訴えている。財政出動の中身は色々とあるが、その目玉の一つに定額給付というものがある。要するに、金をあげるから消費してくれという政策である。4人家族で、6万円ほどの給付が得られるのだそうだ。その他に住宅減税や高速道路料金の値下げなど、色々とメニューは盛り込まれているが、僕はさほどの効果があらわれないのではないかと思っている。財政出動をするとマスコミがすぐに「バラマキ」とレッテルを貼るのは良くないと思うが、財政出動が悪いのではなくそこに祭がないからダメなのだと、僕は判断している。麻生首相はいかにも国民生活を最優先するといった口ぶりで、解散総選挙よりも景気対策と言っているが、その考え方は根本的に間違っている。金融危機の張本人であるアメリカでは、大統領選挙で熱狂しているではないか。一方では、金融関連企業が破綻したりホームレスが増えたりもしているが、同時に大統領選で熱狂しているのがアメリカである。日本の総選挙が祭になりうるかどうかは疑問なので、すぐに解散総選挙をした方がいいと主張しているのではない。解散総選挙をすると政治空白ができてしまい、国民の生活はますます悪化してしまうと麻生首相は主張しているが、政治空白よりも祭空白の方が問題なのだ。だから、解散しようが景気対策をしようが、そこに祭がなければ国は活性化しないと僕は言いたい。なぜと言って、景気向上には、実際の生活状況よりもマインドの方が強く関わってくるからだ。給付金をもらったって、マインドが変わらなければ、国民は貯金するだである。マインドを変えるために欠かせないことが祭だと思っているのだ。具体例をあげてみよう。たとえば僕が2万円の給付金をもらったところで、何かアクションを起こすかといえば起こさない。貯金をしておくだけで終わるだろう。だが、「ソープランド祭」という祭が行われたとしよう。ソープランドの入浴料を国の財政出動によって全店無料にするのである。そうすると、せっかくだから行ってみようと僕は思うかもしれない。この「せっかくだから」というマインドが大切なのである。是非とも行ってみようという人だけでは消費への刺激にはならない。「せっかくだから」人種を取り込むことで消費が刺激されるのだ。そして、僕はソープランドに行って入浴料は無料だがサービス料は支払うわけである。結果として消費が喚起されることにつながっている。給付金2万をもらえば、ソープランドの入浴料は払えるが、「せっかくだから」というマインドがないために、行こうとは思わないわけである。では、「ラブホテル祭」という祭が行われたとしよう。現在僕には、ラブホテルに行ってくれるような女性はいないし、給付金2万円をもらったからといってラブホテルに女性を誘おうとは思わない。だが、「ラブホテル祭」で国の財政出動によってラブホテル代が全店無料になったとしよう。そうしたら、「せっかくだからラブホテルに行ってみよう」と女性を誘うかもしれない。そうなると、ラブホテルに誘うためのシチュエーションを作るために、そこそこのお店でディナーを食べワインなどを飲むだろう。そこで消費が喚起されるわけである。これが祭の効用である。そして、非日常的な「祭」と日常的な「物語」が線でつながっていくと、国家というものに明確なビジョンが見えて最高の形になるのである。これについても軽く例をあげると、「不倫奨励法」という法律を作り、不倫関係を国家が支援していくとする。これはつまり、家族という物語だけでは停滞する社会に対して、家族以外の関係に物語のスポットを当てていくということを意味する。つまり、男女には夫婦という関係が絶対ではありませんというビジョンが見えてくるわけである。この物語があった上で、「ラブホテル不倫祭」という祭を行うとする。不倫関係にある男女の場合、宿泊料を無料にするわけだ。このようにすると、男女の新しい物語と、その物語を活性化するための祭というものにベクトルが生まれ、大きなうねりとなっていくのである。僕が言っているたとえは、わかりやすく極端なことを持ち出しているだけであるが、国家作りとはこういうものではないかと、政治の役割とはこういうものではないかと思うのだ。ところで、最近僕は毎日毎日原稿を書くだけの生活を送っている。あーあ、僕とラブホテルに行ってくれる飛びきりいい女はいないだろうか。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
*友野康治オフィシャルサイト「LOVE MYSELF」へもお立ち寄り下さい。
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:32 | ニッポンからの手紙

vol.143/図書館にいこう<みぞけん/イラスト・ポスティックス>

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 サマータイムが終わった。時間を戻しているはずなのに、日が短くなっているのには、毎度、腑に落ちないところがある。あっという間に夜がくるし、寒いので、うんざりしてくる季節だ。パリ症候群っていうくらいの鬱病があるのも、冬に天気の悪いパリではうなずける。寒くながーい冬の到来間近だ。
 さて、どの国にも存在するであろう図書館だが、もちろんパリにも至る所に図書館がある。パリの街は20区に区分けされているが、そのなかに63カ所もの市が運営する図書館が存在する。もちろんすべての図書館で貸し出しができるわけではないが、ほとんどの図書館で貸し出しは可能だ。特に専門職が強い図書館が存在するのはうれしい。借りる本の目的で図書館の場所が選べるからだ。ちなみにどのような専門図書館があるのかというと、さすが映画の生まれた国フランス、映画専門から始まり、音楽系専門、法律専門、美術専門、パリ歴史専門、文学系専門、推理小説系専門、もっともオリジナルなのは、女性に関する文献専門の図書館だ。自由の女神が象徴されているフランスならではの図書館といえよう。開館時間は図書館によって異なるが、だいたい10時ころか、お昼12時ころから19時ころとなっている。休館日は日曜日と月曜日。図書館というと学生が行く場所というイメージがあるが、パリの図書館は子供から老人迄たくさんの人訪れる。子供の本が充実しているので、こども達はたくさんいるし、学校帰りのこども達が、漫画を立ち読みしている事が多いのも印象的。学生は市の図書館にはあまりいない気がする。どちらかというと、ポンピドゥーセンターの図書館に通いつめる傾向が高いように感じる。毎日、ポンピドゥーの図書館の入り口にはたくさんの人が並んでいる。10時迄開いているのも理由かも知れない。さて、ボクが図書館を利用する大きな目的のひとつはCDを借りられるということだ。一カ所の図書館で最大5枚迄、3週間の期間借りられる。それもたったの年会費30ユーロで借り放題だ。図書館をはしごすれば、最大一回で20枚借りられる。もちろん新譜のアルバムもすぐに図書館に並ぶので、タイミングさえよければすぐに借りられるのだ。サイト上から、どのミュージシャンのアルバムがどこの図書館にあるのか検索できるのもいい。音楽をMP3に落とせる時代なので、利用価値大だ。他にはDVDも借りられるので、一種のレンタル屋さんになっているパリの図書館である。ぜひパリに住んだ際は利用しましょう。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:32 | ヴェルサイユの鯖

vol.143/西洋と極東の島国に共通する数字<Takaki Matsumura>

「かわいそうなヒロシ」
 ある日の帰り道、大通りで2人の女の子が、なにやら話をしながら歩いていた。私は、自転車置き場に向かいながら、2人の声が大きかったこともあり、彼女たちの会話に注目していた。f0055491_6301942.jpg
 2人の年齢は、短めのデニムスカート、イラストが描かれたセーターなどの服装から想像するとおそらく20歳前後だった。そんな彼女たちの会話は、恋愛の話。どうやら、ひとりの子が自分の彼氏に着いて相談をしているような様子だった。
「でもな。○○○○やし」
「そやなぁ。○○は、○○やからなぁ」
 どこにでもあるありふれた会話の一部分。そして、そのあと一方の子が「でも、あんた、ヒロシと結婚できる?」と問いかけると。間髪を入れず、「ムリムリムリムリ…」
 年齢的なものや、結婚に対する考え方もあるだろう。しかし、おそらくヒロシの前では、猫なで声のひとつやふたつ使ったことはあるだろうに、何の迷いもなく、しかも「ムリ」の4乗である。その後、彼女たちがどんな風に会話を転がしていったのかは分からないが、私はヒロシへの思いでいっぱいになり、全く知らない赤の他人にも関わらず、頑張れと応援したくなってしまった。
「想像力」
 日頃、優しさの足りない人は想像力に欠けている私は思っている。「ああしてあげれば…」「こうしてあげれば…」など、他人の行動に対して、予測的ではあるけれども想像できることは沢山ある。しかし、それが出来ないということも理解できる。
 例えば、怒りの感情でそれどころでない場合や、そもそも想像することを訓練されていないなどが理由としてあげられるだろう。前者は、我慢強くなってもらうとして、問題は、後者だ。こちらはある程度の年月もかかるし、普通にすれば、そんなに簡単でないことは明らかだ。しかし、ある方法を私は最近発見した。といっても、非常に愚かな方法かも知れない。というか、これを読んでいただいている人たちの9割以上の人たちから、叱責を買う、もしくは、あきれられるだろう。
 その方法とは、「想像力の訓練には、官能小説を読め」ということだ。欲求に対して非常に直接的であり、男だけかも知れないが、そのことに対する想像力というものは、異常なほど強く、そして、研ぎ澄まされているだろう。そのステップはいとも簡単にクリアできるはずである。そうすれば、自分頭の中で、言葉や文章という情報からある世界を想像することがいかに容易であるか気付くはずだ。なにせ、これまた男の場合しか分からないが、実感として体感できる場合もあるのだから。
 これを他人の言葉や行動に当てはめ直すだけである。応用編である。
 ただし、この方法は決して他言しない方がいいだろう。バカの目で見られたり、失笑されるのに耐えうる根性がなければ、想像できないくらいの体験をすることに違いないはずなので。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:30 | Kamakiri no ashi

vol.85/帰って来たアメリカナイズ<むかでのすきっぷ>

巨食症になる(3)
 成人の胃のサイズは、通常本人の握りこぶし大の大きさなんだそうであるが、最大膨らんで成人男子の場合、約1400~1500cc程度になるそうである。
 胃拡張とは、本来胃の内容物が十二指腸にスムーズに移動出来ない状態が続く事によって起こるものなのである。
 生物学の理論で、『アロメトリー』(Allometry)というのがあって、これは生物の特定の器官のサイズが変わる事によって、プロポーションや寿命、代謝率などが変わって来るという学説なのであるが、この理屈によれば、胃のサイズが変わって来ると、当然それに従って体型も変わって来るという事になる訳で、大変失礼ながら、体重が200Kg位にまで肥満してしまった方の胃は、相当肥大していると思われるので、それに合わせた外見の変化というのが認められるのではないかと思うのである。そう言えば、なるほどそれらの方々の体型というのは、何故か映画『スターウォーズ』に出て来るジャバ・ザ・ハットに似て来るというのはものの道理という事になるのである。
 然し、とっても沢山食べるくせに、何故か痩せている方というのも居られる訳で、世間ではこの種の方を『痩せの大食い』と呼ぶのであるが、これは一体何故なのだろうか。
 むかでは当初この問題は、ご本人の胃拡張のせいだとばかり思い込んでいたのであるが、どうやら違うのであって、この現象は、ご本人の胃の形状に関係しているらしいのである。要は胃下垂の方が痩せているのである、というお医者さんの見解があるのであって、胃下垂だとどうして太らないかと言うと、胃下垂の方の場合、腸との境目である胃の弁の部分が、下垂した胃の圧迫により正常に機能しなくなって、十二指腸への弁が開きっぱなしとなり、食べたものが胃から腸にストレートに運ばれてしまう為、あまり胃での消化がされずに、結果最後の砦(この門は見る事が出来るが)まで未消化で通過してしまい易いのよ、という事らしいのである。より正確に言うならば、胃下垂だから痩せるのではなくて、痩せているから胃下垂になり易いという関係にあって、痩せている方は太ろうと思って一所懸命食べたとしても、胃下垂だから太れないのよ、残念でした、の関係にあるらしいのである。しかしこの胃下垂は、日本の女性の場合は実に3分の1の方がその気があるというから驚きではないか。女性の場合には、モデルさんのようにスリムな体型を志向される方が多いだろうが、痩せてるから太らないんだよ、と言われた日には、ダイエットのし甲斐が無くなっちゃう研究報告でもあって、これまたお気の毒な限りなのである。

 余談であるが、人類の胃下垂に非常に近い胃の構造を持っている動物は何か、ご存知だろうか。それは、金魚さんなのである。金魚さんを代表とする、コイ科(鮒とか鯉)の仲間達は、胃が無いのである。胃が無いので、食べ物を溜めるところが無く、そのまま食べたものは腸に流れて行ってしまうので、胃で消化が進まないという意味からすれば、胃下垂の方と金魚さんは、内臓の構造が似通っている訳であるが、金魚さんの場合には、胃下垂のように胃が垂れているのではなくて、本気で胃が無いのであるから、そもそもそんなに沢山のものを一辺に食べる事が出来ない動物なのである。なので、金魚さんを大きく育てようと思って一度に沢山の餌をあげるのは禁物なのである。
 むかでも一時期、観賞用として金魚さんを飼っていた事があるが、その愛くるしい容姿とは裏腹に、うんちの切れが悪いのはどうも頂けないと、常日頃、眉をひそめていたのであるが、彼等の体の秘密を知ってしまってからこのかた、ある種憐憫(れんぴん)の情をもって長いうんちを眺められるようになったのである。

 ところでそもそも人間は、どうやってお腹が一杯だと感じて食べるのを止める事が出来るのだろうか。胃は、人の満腹感を感じる為の器官でもある訳であるが、何故お腹一杯だと感じるかと言うと、それはちゃんと体にはお腹一杯を感じるセンサーが付いているからである。きっとそれはむかでがご幼少の頃、工夫クラブ(小学校内の天才発明家の集まりとでも理解頂ければ分かり易い)で作成した『お風呂ブザー』の構造に酷似しているに違い無いのである。但し、人間の体のお風呂ブザーの場合には、未だその構造が完全には明らかになってはおらず、現在でも諸説が唱えられているが、従来までの有力説は、脳の視床下部というところにある満腹中枢と、飢餓中枢というところの調整具合で決まるのであると言われていて、これは血中のグリコーゲンの量によるのよと、この40年間ずっと信じられて来たらしいのである。だが最近では、どうやら体内で分泌されるホルモンによって摂食量がコントロールされているという説が有力視されているのであって、名前は『レプチン』という食欲を抑制しちゃう物質と、『グレリン』というレプチンの作用自体を抑制する物質の2つが、脳の満腹中枢への刺激を制御しているという事らしいのである。
 むかでは、ご幼少の頃から、わんちゃん(犬)には満腹中枢が無いから、面白がって沢山餌をやるとお腹が破裂するほど食べるので、餌は一度に沢山あげない事と、おたあさま(注:お母様の事)から教わった記憶があるのだが、どうやらわんちゃんにもいろんな種類が居て、満腹をすぐに感じる種類も居れば、そうでなく無限大に食べる種類も居るという事に最近気付いたのであって、寧ろ沢山餌をあげちゃ駄目なのは金魚さんなのであり、こちらは間違いの無い話なのである。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:28 | ご無沙汰むかで

vol.64/イグアナおばさん<秋野マジェンタ>

「レキシントンに行きたいんだけどさ。この電車でいいの?」。駅のホームで、還暦すぎの女性に日本語でたずねられた。日本語の新聞を広げていたからか。私が日本人であると察しがついたのは。
 旅行者風情でもない彼女。あまり電車に乗らない人なのだろうか?短髪で小太り、150センチあるかないかの彼女は、電車が来るまでの数分の間に、「レキシントンに息子が住んでいる」ことや、「母親を探して35年前に渡米し、ギリシャ人の最初の夫に無理矢理結婚させられ、奴隷のように扱われ、やっとのことで離婚。2人目、3人目もろくな男ではなく、結局、合計6人の子供を授かり、今はアストリアで一人暮らし。もうすぐ60歳」という情報を提供してくれた。
 電車が空いていたため、私たちは隣同士に腰掛けた。なかなかに波瀾万丈の半生を送られたようだ。どこかで記事のネタになるやもしれぬという、卑しい期待がチョピりと芽生えた。
 すると、彼女。「私はこれで有名だったのよ〜。」と、頭にイグアナをのっけて、ネオンカラーの衣装を着た数年前の自分の写真を見せてくれた。丁寧にラミネートされた、地元紙の「レイディー・イグアナ」のニュース記事だった。「そして、こっちが日本のフライデーに『イグアナおばさん』って記事になった時の。」「小さかった頃の子供たち」が6人。数枚のラミネートをご披露してくれた。
「子供を養うために、何かのパレードなんかあると、こうやって奇抜な格好で、イグアナ連れて、出かけて行ってたのよ。今は、子供たちも成人したからやってないけどね。」おひねりをあてにした芸能生活だったのだろう。今もこうしてレジュメ代わりのようにラミネートを持ち歩いているとうことは、まだどさ回りをしているのだろうか?
 イグアナおばさんは、こちらが頼みもしないのに電話番号をくれた。「え〜と、何番だっけ?」といって、コーリングカードを取り出して・・・。貧しいのだろうか?「今度、取材してもいいよ。」私も一応、携帯番号入りの名刺を渡した。
 翌日、非通知で電話がかかって来た。彼女だった。その内容が全て本当ならば、日本の出版屋が争って自伝の話を持ちかけて来そうな話が始まった。母親についには再会出来ず、姉とも生き別れになったこと。結婚後は性の奴隷のような役割を強いられ、今だに恐怖で夜目覚めることがあること。自分の腹をいためた子供らが、今は自分を邪見に扱うこと。近隣に住む彼らを訪ねる電車賃の工面もままならず、でも彼らは援助すらしてくれず、自分は、アストリアの「黒人ばっかの」プロジェクトに住み、娘が3年前にくれたお古のスニーカーを今も履いていて、たまにプロジェクトの子供を撮った写真が、コミュニティー紙に掲載されるが、「だ〜れもお金なんかくれないし」、食事はスープキッチンで食べてるのよ、私。
「〜してくれない」「〜のせいで」「〜な思い(や暮らし)をさせられている」と、見事なまでに被害者意識で統一された彼女の話し振りからは、浴びたらこちらの運気まで下がりそうな臭気がプンプンして来る。対面と電話で合計30分も接していない私ですら、すでにウンザリなのだから、長年ともに暮らした子供らの気持ちは、推して知るべし。
 取材に出る時間になったので、話の隙に割り込み、その旨告げると、「あ、そう。」ガチャリ。15分ほどの電話で、私から施しの申し出を引き出すことの出来なかったイグアナおばさんだった。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:27 | オンナの舞台裏

vol.56/THE untitled<腕前建設>

■YES ! I CAN
 オバマが圧勝した。4日は夕方からテレビを着けっぱなし状態で、キッカリ深夜3時まで釘付けになった。勝つ予想はしていたが「でも案外、ひょっとして……、前回の例もあるしなあ……」と思うところもあって、画面から目が離せないでいた。午後11時18分。早々にマケインがアリゾナ州フェニックスの陣営で敗北宣言をした時点で「やったんだあ〜。アメリカ……やるなあ」と、オバマ氏曰く「合衆国民」でも無いのに、これからのアメリカへ、期待感が膨らんだ——。
 15年間、選挙権が無いまま、3度目の大統領選挙を味わった。オバマ次期大統領については今から遡ること617日前に、2007年2月23日号(vol.139)の特集で紹介した。多分、日本のメディアとしては幣紙が最初だろうと、ちょっと誇らし気に思っている。1916年生まれ、47歳のアメリカ大統領の誕生である。なんと年下だ。それに比べて、一体、私は何をしてるんだろうか……と、比べるのも烏滸がましい限りだが、つくづくそう思う。
 今、引っ越しの荷物作りに追われる日々を送っている。たかが15年、されど15年。荷物の1つ1つに想い出がある。私は遅まきながら36歳で渡米した。日本は終身雇用で離婚後でも安泰。このままズルズル勤めてさえいれば、毎月、給料は保証されているし、多少なりとも豊かな老後も待っている……そう思わなかったか?と問われれば、YES THAT'S RIGHTと答えただろう。その通りだ。それまで働いていた大手と言われる巨大メディアを辞めて「学生になってイチから勉強しよう」「40歳まではアメリカで頑張る」と意気込んでいたものの、損得勘定は何度もしたし、未練タラタラだった。離婚2年後、突然今度は「退職して渡米する」と言い出した娘のワガママを快諾してくれた両親、実際は心中キツかっただろう。そんな色んなシガラミを引きずったまま、ここニューヨークでズルズルと暮らして来た。振り返ると、本当に色んなことがあった。マグカップ1つ、ショッピング・バッグ1枚でさえ、すべてに想い出がある。f0055491_6254436.jpg
 昭和1ケタ生まれの両親を持つ私は「勿体ない」と、何でも捨てずに溜めるクセがある。クローゼットを掃除すると、出てくる出てくる紙製のショッピング・バッグや、きちんと折り畳まれた包装紙の山。何でこんなモンまで溜めていたんだろう?と苦笑しながら処分する。しかし、それらには懐かしいニューヨークの移り変わりが走馬灯のように見てとれる資料にもなっている。
「GALERIES LAFAYETTE」(ギャラリー・ラファイエット=写真)。そういや、このフランスから進出しているデパートで、生まれて初めて「CLARINS」(クラランス)の基礎化粧品類を買った。日本では高価だったし、アメリカなら尚更「Clinique」(クリニーク)でも買っておけ!的な感じだったから、ちょっと気位の高いギャラリー・ラファイエットで買うことへのステイタスも、少なからず感じていた。あの場所……、ナイキタウンになってから、もうどのくらい経つのだろう。
 7月から9月にかけて、最後の追い込みとばかり日本からの来客が相次いだ。久しぶりにブラブラと付き合いがてらショッピングに出かけ「何でもお任せください」とニューヨーカー気分で得意気に友人を案内するも、店の前まで来て「えっ?何年か前まで確かにあった…ハズ」とバツの悪い思いを何度もした。行く先々の店が消えているのである。それも1軒2軒の騒ぎではないので「歳とってボケたんじゃない?」と思われはしないかと、胸中穏やかではなかった。
 様子見に、会社へ休暇届けを出して日本から来てくれた友人皆に「グリーンカードも放棄するつもりで本腰を入れて帰国する」と話すと、100%「えっ?勿体ない!それは止めた方がいい。ニッポンは益々住みにくいし、絶対に後悔するから、キープしといた方がいい」と返ってくる。さらに「日本はマジ不況で嫌な事件ばっかりだし、仕事なんてとてもとても。組織も昔みたいに面白くもないし、その歳じゃ、まずムリ!ましてやフリーランスなんて、どーにも、こーにも。このご時勢だからねえ……」とネガティブ反応ばかりだ。日本を出た時もそうだった。「勿体ない」と、誰1人、決断に賛成してくれた人はいなかった。ニューヨークを離れる時もまた「勿体ない」を繰り返される。15年ぶりに、当然、損得勘定が作動する。もちろん未練もタラタラだ。しかし今、これらの迷いをスパッと断ち切るかのように、なり振り構わずドンドン捨てていっている。
 50代になって、再度スゴイ賭けに出る。本来なら、そろそろ老後を気にしつつ、穏やかな余生の在り方などを検討していたであろう年代だ。今まで好きに生きてきた分、そのツケは大きい。貯金もなし崩しに無くなり、一文無しの状態で始める哀しい50代を、誰が想像できただろう。「YES! I CAN」。イチかバチか、やるしかない。
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:26 | THE untitled

vol.47/昼下がりの旦那さん<buku1905>

■まわるヘッドライト。
なんだかイライラするわけです。
悪の心、真っ最中。
最近で一番イライラしてるわけです。
悪の心、真っ最中。
このままでは、プラスチックゴミを可燃物の方に捨ててしまいかねない。
悪の心、真っ最中。
このままでは、ガムとか噛みはじめてしまいそう。(それは別に構わない。)
悪の心、真っ最中。
アロハとか着て、サングラスを「グラサン」て呼んでしまいそう。
(それも別に構わない。)
悪の心、真っ最中。
悪の心、真っ最中。

■しゃっくりママさん。
いつだってそうなんですが、体調が悪かったりするわけです、僕。
そんな様子を見て
「後でマッサージしてあげる。」
なんて、優しい彼女は言ってくれたわけです。
結婚して良かったなあ。
って思いながらすでに五時間が経過。
もう少しだけ待ってみようと思ってますが、
彼女は2時間前に寝てしまっているので、きっとマッサージは実施されないんだと思う。
結婚して良かったなあって思いながら寝ようと思います。
もう人類は滅びると良いね。
(心に悪の花が咲き乱れ中な、ここ最近。)

■○高。
職場の人から
「顔の汚れで、特に酷い部位として『Tゾーン』と『Uゾーン』があります。」
なんて話を聞きました。
要は、顔全部ってことかと思いました。
もしくは、鼻の下以外全部ってことかと思いました。
秋になりました。
ご自愛下さいって思いました。
*原文は以下のアドレスへ*
plaza.rakuten.co.jp/dadamore/
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by tocotoco_ny | 2008-11-13 06:22 | 2万円でどう?