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vol.04/見下す権利<秋野マジェンタ>

 子持ちで残業ができないことを理由に退職を余儀なくされたY子。離職後すぐに、以前と同じ業界で在宅フリー宣言。くやしまぎれに減量にも励む。
 約4ヶ月経ち、8キロほど痩せた去年の暮れ、解雇された会社から、忘年会のお知らせが来た。辞めた後も社外スタッフとして繋がりがあったため、お招きリストに挙がったのだろう。解雇という形で退いたので、元同僚の目が少しだけ気になるが、行けば、案外仕事のチャンスを拾えるかもしれないし、なんてったって、当時よりも痩せている自分をご披露に行きたい。みんなの記憶の中のアタクシをアップデートしたい。お門違いリベンジ。vol.04/見下す権利<秋野マジェンタ>_f0055491_603927.jpg
 当日。「痩せましたね」の嵐にご機嫌なY子。「え、そうですかあ? 最近体重量ってないんですけど、ちょっと忙しかったから、痩せたかもしれませんね。」体重なんか一日3回はかってるだろうが。忙しいのなんか週一だろうが。
 そして一番の収穫。もと同僚が太っていた。Y子は言いたくて仕方ない。「うわ、どしたの、その体?」この無惨に肥えた元同僚のN。プロジェクトベースの契約社員だった頃から「私、時間無制限で働けます」と、なりふりかまわずアピールしていて、Y子がやめたあと、正社員の椅子をめざして、猛攻撃アプローチをかけた女である。Y子がはじかれた元凶が、この女といっても過言ではない。その彼女が無惨なまでに太っている。仕事一色なんだろうなあ。男いないんだろうなあ。着る服ないんだろうなあ。服選ぶときに、「隠す」が最優先基準なんだろうなあ。よくわかるよ、その辺は。ざまみろ。デブ。ああ、言いたい言いたい。「どしたの。太っちゃって。仕事大変なの?今何歳だっけ?36?早くなんとかしないと、手遅れになっちゃうよ。独身でしょ、まだ。結婚もしたいんでしょ。駄目ダメ。女ざかりにそんなナリしてちゃ。」ただ、いくら痩せたからといっても、まだ絶対値が太いY子。「目くそ鼻くそ」とか「同病相哀れむ」なんて言葉がちらつき、ぐっと舌を噛む。そして、もっといじわるになる。相手に私が痩せたことを指摘させるのである。たいして忙しくもないのに、話を仕事仕事に持って行く。生活が不規則だと言ってみる。彼女が「そういえば、すごく痩せましたよね」というのを待つ。そしたら言ってやろう。「ああ、最近体重はかってないけど(大嘘)服のフィット感から痩せたような気はしてたんですう。」
 まあまあ、今回は「やせたやせた」って言われて気分がいいし、Nの無様な姿があんまりにかわいそうだから、見逃してやろう。そのかわり、次に会ったとき、まだアンタが醜いデブだったら、そして、その時ワタシがまだ仕事が少なくて、イライラのキリキリだったら、絶対にいじめてやるぞ。それまでには、虐める側に相応しく、もっと鋭い体つきになってやるぞ。そして、ホントに仕事で忙しくなってやるぞ、コラ。
 あ、これ、ワタシじゃなくて、Y子の話ね。
(原文まま)
*掲載号では校正、編集したものを発行*
2006年3月17日号(vol.118)掲載
by tocotoco_ny | 2006-03-13 04:48 | オンナの舞台裏
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