その15. 今の総理大臣の名前がわからない(3)
歴史をみればわかるとおり、汚職やスキャンダルは国家と権力が誕生するや発生しているのも又、事実である。古代アッシリアの壁画(紀元前十三世紀)には「世も末だ。未来は明るくない。ワイロや不正の横行は目にあまる」と書かれていたし、賄賂を受け取った役人の名前もその要塞跡から発見されたという。直立歩行以来、人類というのは3000年経った今に至っても何も反省出来てないし、何の教訓も活かしていない、という事の良い裏付けである。 又、古代ローマの民主制では、総理大臣に相当する地位の者を1人でなく2人選び、任期はたったの1年で、任期を終えたらすぐに選挙してしまったのだそうである。きっと長期間権力の座に人間を単独で据えると、その権力を利用して悪い事を考えてしまうのは紀元前の昔から常識なのかも知れないのである。 そんな例はご当地アメリカにもあるのはこれまた歴史が証明してるのである。 $50札でもお馴染みのグラント将軍は、アメリカ合衆国第18代大統領であり、南北戦争時代には北軍の将軍として輝かしい功績を建てた事はご案内の通りである。しかし彼の大統領職時代は汚職とスキャンダルにまみれており、後に彼はアメリカ歴代大統領中最低の評価を得る事になるのである。特に連邦政府の税金から300万ドル以上が不正に着服されたとされるウイスキー汚職事件では、個人補佐官オービル・E・バブコックが不正行為に関与したとして起訴された際、グラントは自らの大統領特権による恩赦により有罪判決を回避させたのである。その後には、陸軍省長官ウィリアム・E・ベルナップがアメリカ・インディアンとの販売・取引権利と引き換えに賄賂を受けとったことが調査によって明らかになり、グラント自身が部下の不正行為から利益を得たという証拠は挙がらなかったものの、彼は犯罪者に対する厳しいスタンスをとらず、彼らの罪が確定した後でさえ、おとぼけを決め込んでいた始末である。この辺、実にあやしい訳である。彼は過度のアルコール依存症でもあり、晩年は多額の借金にも悩まされていたらしいが、彼の死後に出版された彼の自著「回想録」(全2巻)は、遺族に45万ドルの印税をもたらしたとも言われている。そんな悪名高き彼なのに、$50札にちゃっかり載ってるのは何故なのか。成る程、アメリカ国民は彼を$50札に刷り込む事で、「普段全く使えない奴」という意味合いを込めているに違い無いのである。もしかしたら、所持している事が嫌なのでどんどん使ってしまう事によって、貨幣の流通量を増大させて景気回復を狙うというマネタリストの究極の戦法なのかも知れない。そうであれば大したものである。 全く因みにであるが、東京は練馬の「グラントハイツ」の名前の由来が彼に因んでいるのはあまり知られていない事実かも知れない。江戸時代から昭和初期迄、練馬大根の生産地として有名だった東京練馬の光が丘界隈は、昭和22年4月、マッカーサー司令部からの建設事業命令によって成増飛行場跡地に米軍家族宿舎が設営された。その際、アメリカ18代大統領で親日家だったグラント将軍にあやかり付けられた名前が「グラントハイツ」なのである。 「練馬の中のアメリカ」と称されていた同地は、その後返還され、現在では「光が丘パーク夕ウン」として生まれ変わっているのはご存知の通りである。 是非練馬の光が丘にお越しになられた折には、地元の方に「ここの昔の地名は何ですか」と質問しよう。十中八九、「グランドハイツ」と、濁点付きでお答えが返って来る筈である。 余談が過ぎたが、グラント君に限らず、大統領選挙の歴史自体もある意味、スキャンダルの歴史そのものなのである。ケネディ元大統領もマリリン・モンローとの関係をはじめとしてスキャンダルは数多くあったし、ニクソン元大統領はウオーターゲート事件で大統領の座を追われる事になったのはご案内の通りである。レーガン元大統領はイラン・コントラ事件で汚職を働いた事がばれてる訳であり、何も汚職、腐敗、スキャンダルは$50札親父や先代のクリントン元大統領の専売特許ではないのであるが、むかでは先の原稿で随分と現役の某大統領をやり込める内容を書き過ぎていて、「お前、民主党寄りなんでないか」というお叱りを頂きそうなので、敢えて今日は共和党寄りなタッチでお送りする事にして、内股膏薬むかでになり下がる事にするのである。(続く) (上記原稿は原文にほぼ忠実ですが、紙面の構成上、一部削除して数回に分け、校正、編集したものを発行) *原文はむかでのすきっぷ本舗/アメリカナイズ(18)へ* http://www.geocities.jp/cybermukade/mukade0450.html 2006年4月28日号(vol.121)掲載
by tocotoco_ny
| 2006-04-27 07:01
| ご無沙汰むかで
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