■枯れて痩せた土地、見捨てられた「サボテンが密集する砂漠の島」 全長39km、島面積285平方km、人口約1万3000人の小さな島ボネールは、年間平均気温摂氏27度。島の名前の由来になった「よい風=BON AIRE」が1日中吹いている。誰もがイメージするカリブ海の「ヤシの木がそよぐ常夏の島」という感じには程遠く、ここは「サボテンが密集する砂漠の島」だ。何だかアリゾナに来たような印象を受ける。これは降水量が少なく、年中乾燥しているためだという。地元の人によると、他のカリブの島々に比べて蚊やハエが少ないのも、カラッとして繁殖しにくいばかりか、強い風でみんな飛ばされてしまうからだという。 島の歴史は、1000年前にベネズエラからインディオたちが渡ってきたことに始まる。1499年、ヨーロッパから人々が入植し、一時はスペイン領となったが、植物が育ちにくい枯れた土壌で、資源も乏しいため、植民地化を断念。1633年、オランダが隣接するアルーバ、キュラソーと共にボネールを統治することになった。奴隷制度が廃止される1862年までは、奴隷として連れて来られたアフリカからの移民たちが、唯一、島の特産物である「塩」の生産に従事していたという。現在でも島の主産業である塩の製造会社のすぐそばには、当時、奴隷が住まわされていた「小さな小さな小屋」が点在する。英語で「RED SLAVE」と岩のプレートに書かれた赤土の小屋(写真下)や、真っ白な海岸の砂に照り返された「白い小屋」(同上)がある。ギラギラと灼けつくような陽射しに照らされ、吹きさらしの海辺に建つ、これら約20の小屋は、土をこねて作られたもので、人間1人が、かがんで、やっと入られるくらいのものだ。ちょうど少し大きめの犬小屋といった程度だ。目を避けたいような痛々しい歴史の爪痕で、平和ボケとも呼ばれる私たち日本人の世代では到底、想像すらつかない哀しい過去だが、島を案内してくれたボネール観光局(TCB=Tourism Corporation Bonaire)のロバートさんは淡々と説明して「近くにある豪邸はハリー・ベラフォンテの別荘だよ、彼を知ってるかい?」と笑った。 奴隷の小屋は潮風にも時間にも風化せず、昔のまま、強くその姿とどめていた——(次号に続く)。 写真上=強い潮風にも風化せず、昔のままの姿をとどめている「奴隷の小屋」 ●BONAIRE - the Netherlands Antillesシリーズ(1)はこちらからどうぞ! 2006年9月15日号(vol.130)掲載 Copyright © 2000-2006 tocotoco, S.Graphics all rights reserved.
by tocotoco_ny
| 2006-09-14 06:09
| ガイドブックにない島
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