さて、巷で出回っている「NY発/里帰り格安航空券」。NYで発行されているあらゆるフリーペーパーに、それらの広告は掲載されています(本紙は掲載していませんが…。だからこんな原稿も書ける訳です)。これらは広告主である各旅行会社の目玉商品であり、かつ新聞を発行する側にとっても読者確保への重要なニュースソースとなっており双方においしいネタであることは確かなのですが……。
今年に入ってから、特に目に付くのが「大阪行き往復びっくりの$278から」「浪速(大阪)スペシャル!メチャ安い!」「ユナイテッド(UA)里帰りスペシャル」「米系航空会社里帰り(ニューヨーク〜関空行き)破格の$278.00+Tax〜」などといった激安広告。この破壊的な価格のナゾは「○○から」とか「○○〜」といった部分に隠されているワケです。よって今回は「NY発/里帰り格安航空券を検証する」の巻です。 【検証1:結局200ドル以上も加算される!】 例えば、先に挙げた「大阪行き$278」のチケットを、NYにある主要旅行会社3社に問い合わせたところ、どこもこのチケットの規定(ユナイテッド航空利用/往復共シカゴ経由/往復共出発曜日指定あり/Fuel surcharge加算)は同じ。合計金額の回答は以下の通り(安い順)。 (1)A社(J○B)/486.70ドル=$278(Basic Airfare)+$88.70(Tax)+$120(Fuel surcharge) (2)B社(A○T)/487.00ドル=$278(Basic Airfare)+$89.00(Tax)+$120(Fuel surcharge) (3)C社(H○S)/496.57ドル=$278(Basic Airfare)+$98.57(Tax+α)+$120(Fuel surcharge) という結果で、3社の比較でも約10ドル($496.57−$486.70=$9.87)の価格差が生じています。 次に、最近は「eチケット」が主流で、特にチケットを旅行会社から送付して貰う(送料は当然顧客が支払わされる)必要もないので、直接、航空会社のオンラインでサーチしてみると(今回の場合はユナイテッド航空)、Tax &Fuel surchargeなど全て込みで「$486.57」と、上記3社よりも、一番安い価格で購入できることが判明しました。 【検証結果1:チケットは直接航空会社で買え!】 【検証2:Fuel Surchargeってなに?】 まず「surcharge=サーチャージ」とは追加・追徴料金のことで、例えばホテルのチェックアウトの際に、明細書を見ると「surcharge」として「サービス追加料金」が請求されている場合があります。「fuel surcharge」とは定訳で「燃油特別付加運賃」を意味します。これが、今、とても厄介な追加料金の元となっています。 戦争や中東の政情不安、そしてハリケーン・カトリーナなどの影響を受け、原油価格が軒並み高騰し、その煽りを受けて、航空燃料が益々値上がりしているワケです。車のガソリン代が値上がりしてるのと同じです。燃油特別付加運賃とは「燃料の値上がり分の一部を、搭乗客に一律に賦課する運賃・料金」のことで、この特別付加運賃の徴収は燃油価格が「一定水準に戻るまで」と決められており、期間中は大人、子供の区別なく、全ての搭乗者が「空港施設使用料・空港税など」と同様に支払わなければならない費用として定められています。また、この燃油特別付加運賃は各航空会社や区間によっても異なります。 この「燃油特別付加運賃」の基となっているジェット燃料価格(Spot Price of Kerosene-Type Jet Fuel)は、エネルギー省(DOE=www.energy.gov)が算出した統計によるものです。例えばノースウエスト航空の場合、2005年11月16日付けの発券分以降の日本行きの燃油特別付加運賃は「片道65ドル、往復130ドル」となっており、これが下記で説明する2タイプの「改定条件」に伴えば、値下げされることもあるようです。 (改定条件1)ジェット燃料価格が5週間続けて1ガロン当たり1.56ドルを下回った場合=片道50ドル、往復100ドルに値下げ (改定条件2)ジェット燃料価格が5週間続けて1ガロン当たり1.40ドルを下回った場合=片道35ドル、往復70ドルに値下げ (廃止条件)ジェット燃料価格が5週間続けて1ガロン当たり0.84ドルを下回った場合=同追加料金は廃止 しかし現在の情況からみて、1ガロン当たり0.84ドルを下回る可能性は限りなく0に等しく、米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration)の調べによると、今年1月に入ってからのニューヨークのジェット燃料価格(1月2〜13日/土日を除く)は平均で1.82821ドル(1ガロン当たり)。これは昨年12月の平均1.75849ドル(同)よりも上昇しています。ちなみに昨年の最高は平均2.17845ドル(同)の9月で、過去15年間で最も高い燃料価格となっています(下表参照/www.eia.doe.gov)。 よって、燃油特別付加運賃は「期間限定」と言いながらも2003年の秋以降、2年以上も廃止となりうる価格(0.84ドルを下回る)には至っていないことから、改定・廃止どころか、更なる値上げが待っているかも知れません。 【検証結果2:fuel surchargeは当分下がらない!】 【検証3:まだまだ上がる?里帰りチケット】 このほどCNNが報じたところによると、コスト削減を図る航空会社が軒並み増え、当たり前と思っていた枕や機内食などのサービスを有料化する会社が増えそうだと伝えています。既にアメリカン、デルタ、ノースウェストの3社は座席用の枕の提供を中止し、USエアウェイズとユナイテッド航空(どちらも国内便)は機内での軽食も1箱5ドルと有料化に踏み切っています。しかし、コンシューマー・レポート誌の1月号によれば、コスト削減をうたう米大手航空会社9社は超過手荷物や予約、キャンセルの料金として5億ドル近い額を徴収(2005年上半期)。この徴収額は10年前の約3.5倍にも及ぶと発表しています。 【検証結果3:枕や毛布、軽食、飲み物は持ち込め!】 今回「やっぱり日本は遠いな」という結果が出ました。 2006年1月31日号(vol.115)掲載
by tocotoco_ny
| 2006-01-29 08:48
| toco流
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