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vol.147/表紙「Sicko」

Michael Moore's new movie SiCKO
vol.147/表紙「Sicko」_f0055491_2302035.jpg営利を目的とする健康保険と製薬業界にメス!
●米当局にフィルムを没収される恐れアリ!——など、公開前から色々取り沙汰されていたマイケル・ムーア監督の最新作「Sicko/シッコ」が22日、ニューヨークで先行公開された(全米一斉公開は29日/日本公開は8月25日)。同映画はアメリカの医療保険制度を取り上げた作品で、文字通り、胡散臭い業界にメスが入った!という話題作だ。公然の秘密とも言うべき米医療業界とブッシュ大統領の癒着などを痛烈に描いた内容で、作品の柱となっているのがキューバへの渡航だ。
 ムーア監督は今年3月、9.11の現場で働いていた元作業員(建設従事者)や、病を抱えながらも高額であるため健康保険に未加入の人たちを医療費が無料のキューバに連れて行き、治療を受けさせたことにある。当然、アメリカ政府はキューバへの無許可渡航を禁じており、監督らが必要な手続きをとっていなかったとして財務省が調査を始め、5月2日送付の質問状で、渡航の経緯などについて説明を求めている(監督は事前に渡航許可を求める申請書を提出していたが、実際に許可は出ていなかった)。罪に問われるかも知れないと世論は騒然としているが、当の監督は「撮影は取材活動であり、問題はない」と反論。また関係者筋から「財務省の捜査は政治的な動機に基づくもの、政権批判に対する当て擦り」との声もある。同作品は公開前、当局に同フィルムを没収される恐れがあるとして、カナダにコピーを保管していたようだが、その備えの必要も無くなり、漸く一般市民の目に曝される時が来た。
在米日本人の中で王道をゆく「海外旅行者保険」
●フランス通信が「地球上で最も豊かな国で医療行為を受けられない4500万人の人々を描いたコメディー」と評しているように、現在アメリカで、医療行為がまともに受けられない人は4500万人にも及ぶ。そう、かく言う我々在米日本人の中にも、最新の技術を誇るアメリカの医療をまともに受けられない人の数は想像以上に多いハズだ。
 就労していて雇用者側がキチンと保険に加入してくれる場合でも、会社が加入している保険会社や加入プランによっても治療は大幅に異なり、それでも毎月の個人の負担額は安く見積もっても400ドルを優に超える。さらに、その保険を使って病院を訪れた際、その時の個人の一時支払い額は日本と比べてケタ外れに高額であり、さらに歯科については歯科専門の保険に加入する必要がある。vol.147/表紙「Sicko」_f0055491_230558.jpg
 そんな理由から、日本人長期滞在者はもちろん、グリーンカード取得者の中でも、一時帰国した際「海外旅行者保険」に加入して再入国してくる人も少なくない。海外旅行者保険の規約ではグリーンカード取得者は契約できないことになっているが、日本で発行されたクレジットカードや住所さえあれば、保険会社の各営業所に出向いて審査を受けずとも、オンラインで簡単に加入できるのが盲点だ。またアメリカで海外旅行者保険を取り扱う病院も多い(特に日系)。そこは暗黙の了解で、病院側も明らかに「旅行者では無い」(度々の通院/カルテからも判明)と分かっていながらも、そこは商売。患者がどんな保険を使おうと、高額であろうとも治療に有した費用を各保険会社に請求するだけで、チクったりするほどマヌケではない。
 また、あまり利用されていないようだが、日本の健康保険加入者には「海外療養費制度」という利点がある。海外でケガや病気になって現地の医療機関を受診して支払った医療費は、帰国してから、加入している健保組織に請求すると、日本の標準医療額に基づいて算定され戻ってくる。但し、請求するには診療内容明細書(診療内容、病名・病状などが記載された医師証明)と領収書、およびこれらの和訳文が必要。
貧乏人は野垂れ死ね!それがアメリカだ
●日本での配給元である「ギャガ・コミュニケーションズ」が現在、HP上で同映画の告知を行なっているのだが、その真っ赤な画面一面に、最後にマイケル・ムーアから一言『アメリカで健康でいるためには、病気にならないようにするしかない。』という文字が浮き出されるのだが、当たり前過ぎて、滑稽で笑える陳腐なコピーだ。健康でいるためには、病気にならないようにするしかないのは、どこの国であっても同じこと。ムーア監督も、そんな単純な言葉を伝えたい訳ではないだろう。何か、日本の映画業界にも影響を及ぼすアメリカ政府筋などのチカラが見隠れするのだろうか。日本の映画業界は何を恐れてビクビク配給しているのだろう……。当然、恐れを知らない幣紙では、こんな奥歯にモノが挟まった言葉は一切使わず、あえてズバリ言う!「どんな理由があるにせよ、貧乏人は拒絶されて野垂れ死ぬしかない。それがアメリカだ」
マイケル・ムーア監督「Sicko」のオフィシャルサイトwww.michaelmoore.com
'What can I do?' - SiCKO
2007年6月29日号(vol.147)掲載
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by tocotoco_ny | 2007-06-28 02:33 | 2007年1〜12月号
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