人気ブログランキング | 話題のタグを見る

vol.71/アメリカナイズした動物たち(2)<むかでのすきっぷ>

■日本から米国に渡り、帰化した動物たち<金魚>
Gold Fishは幕末に日本から渡米したお魚である。こちらはNishikigoiとは違い、Gold Fishで名前が定着したようである。観賞用としてご当地でも実に様々な種類の金魚が水槽を賑やかにしてくれていて、日本人としてもちょっと誇れるお魚なのであるが、もとを正せば金魚というのは、鮒の突然変異をベースに改良を加えられた改良種であり、そのルーツは中国の南北朝時代に遡るというから歴史も相当古く、改良種が日本から渡米したとは言え、純日本産とは言い切れないお魚でもあるのである。最近熱帯魚屋さんに行くとお目にかかる『コメット』という尾びれのひらひらが美しい金魚は、実はアメリカからの逆輸入種なのであり、金地金や貨幣などと同様に、既に国際的な交流も進んでいる動物な訳である。 
ところで、やや唐突なきらいはあるが、やはり金魚と言えば金魚すくいなのである。その金魚すくいに使う網の事なのであるが、最近でこそ、もなかの皮みたいなものにフォーク状の柄を指したものもあるが、伝統的には針金で出来た丸いフレームに和紙を貼ったものの歴史が古い。この道具の名前、皆さんはご存知だろうか、これはなんと『ポイ』と呼ばれてるのである。『えー、おじさんの言う事、嘘っぽーい』なんて洒落てる場合でなく、業界ではこの名称は常識なのである。
金魚すくいもある意味スポーツみたいなもので、全国競技会もあるらしい。平成19年、奈良県大和郡山市で開かれた全国金魚すくい選手権大会第12回大会、小中学生の部では、実に42匹の金魚をすくった桝谷晃君が2位の鈴木君の34匹を大きく引き離し、堂々の優勝を果たされておられるのである。ここで読者の皆様がご当地アメリカで『オー、ジャパニーズ・キンギョ・フィッシング、ミテミタイアルネ』なんて言われた時に一匹もすくえず赤恥をかかれないように、そっと極意を伝授しちゃうのである。
極意その1:ポイの枠も上手に利用してすくおう(金魚を枠に引っかけて、サッとすくい上げる)極意その2:ポイは水面に対して斜めに入れて、斜めに出そう(水の抵抗を最小限に抑える)極意その3:水中でのポイの面は、水面と平行にして動かそう(これも水の抵抗と和紙の溶解を抑える効果がある)
如何だろうか。これであなたもゴールド・メダリスト間違い無いのである。唯一の難点は、ご当地アメリカでは縁日に金魚すくいの出店がない事であるが。
これだけ熱の入った金魚すくい全国大会なのだから、中には勝ちたい一心から、いんちきしちゃう御仁も出て来るのが人の常である。第9回大会の折、団体戦優勝チームのメンバーだった埼玉県熊谷市の男性会社員が、隠し持っていたポイを不正使用した事が発覚し、主催者である全国金魚すくい競技連盟は後日、優勝取消しを発表したのである。なんだか、ポイをペースメーカーに変えて全国金魚すくい競技連盟をIOCに変えれば、そのままオリンピックで騒がれた事件とさも似たりなのである。
日本でもアメリカでも有名となった金魚は、今や地球規模でご家庭の観賞魚としてその地位を得て、見事全国区入りを果たした訳であるが、金魚の抱く野望はそれに留るところを知らず、遂に地球をも飛び出してしまったのである。1994年、20万匹の候補者(候補魚)の中から、選りすぐられた6匹の精鋭金魚がスペースシャトル『コロンビア号』に搭乗し、向井千秋宇宙飛行士らと共に宇宙の旅にお出掛けしたのである。その目的は何かと言うと、宇宙酔いの研究の為だったのである。何で宇宙酔いの研究に金魚を使うのかと言うと、金魚の耳の構造が人間と似ているからだそうである。そもそもむかでは宇宙酔いとは何だか分からないし、金魚が宇宙酔いした事をどうやって確認するのかも分からない。まさか『あ、大丈夫?お水持って来ようか?少し横になった方がいいんじゃない?こんなところでお好み焼き作らないでね。』なんて話し掛ける訳でも無かろう。人間の耳に似てるから金魚を採用したとか言っていて、ちょっと騙されそうになるが、そもそも乗組員は人間なんだから、乗組員が酔ってるか調査すれば済む事じゃないか、と金魚擁護論を強硬に展開するむかでなのである。ところで、金魚も宇宙服とか着るのか?金魚の宇宙服って一体どんなんだろう。胴体部分はいざ知らず、頭部はやはり金魚ばちだったのか。それから、宇宙飛行をした勇敢な金魚達は、その勇敢な行動を称えられて、アームストロングとかコリンズとかオルドリンとか名付けられたに違い無いのである。
ところで、金魚を飼う時、水槽に入れる藻なのであるが、その中でカボンバ(Cabomba Caroliniana、フサジュンサイ)と呼ばれる藻は北米原産なのである。
金魚ばちを買って来て、金魚を入れてカボンバを植えたら、呉越同舟、いや、日米間コラボレーションの新しい形を正に具現している事になるのである。(そんなに大げさではないような気もするが)
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年4月11日号(vol.164)掲載
by tocotoco_ny | 2008-04-10 04:20 | ご無沙汰むかで
<< vol.129/億万長者の資質... vol.50/Nさん<秋野マジ... >>