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vol.129/蜘蛛に見せられた女<みぞけん/イラスト・ポスティックス>

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 今年もついにサマータイムの時期がやってきた。長い、寒い、暗い、3拍子の冬に終止符を打つ気分である。たかが1時間、されど1時間。この1時間だけ時間を早めただけで、こんなにも気分が違うものかと、毎回思ってしまう。気分の問題といってしまえばそれまでだが、日が延びた気分はうれしい。徐々に春の兆しは来ているようだ。
 さて今回紹介するのは、ポンピドゥーセンターで展示している、「ルイーズ・ブルジョワ展」。人生の半分以上をアメリカはニューヨークで生活しているので、フランス人っぽい感じはしないけど、れっきとしたパリ生まれのパリジェンヌです。1911年生まれ、なんと96歳だから驚く。もう相当なお年なのに、それでも未だに現役で活動しているというから、頭が下がる思いです。おばあさんになって、小さいかわいいおばあちゃんというイメージがあるが、彼女の作品はその容姿から感じられない、パワフルで大きい作品を手がける。パリで成人するまで育った彼女は、美術史家である夫、ゴールドウォーターと知り合い、結婚。その後、夫とニューヨークに旅立ち、活動を始める。ブルジョワのテーマは、対照的なものが多い。それは、フランスとアメリカで生活した事のある彼女が自然に出てきたテーマなのだろう。それと、彼女曰く、幼少の頃の記憶がテーマになっている。ミステリアスであり、マジカルであった幼少時代が印象深いのだそう。デッサンや絵画も描いてはいるが、ブルジョワというとやはり彫刻ではないだろうか。ちょっと奇妙に移る彼女の作品は、どこかグロテスクであり、同時に人を引きつける魅力にあふれている。初期の頃は、木材を使っていたが、それをやめてマーブルを使いだし、それもやめ、ラテックスやゴム素材を使いだしという風に、一度壊しかけ、また再構築するという手法をしばしば使っている。ボクの中では、ブルジョワというとやはり蜘蛛の彫刻だと思う。初めてニューヨークで見た、ロックフェラービル前にそびえ立っていた何十メートルの高さもある、蜘蛛の彫刻を見た時は、今思い出すとすごくインパクトがあった。その後にロンドンのテートモダンでも同じ蜘蛛の彫刻をみて、圧倒された記憶もある。彼女にとって蜘蛛のイメージは「母親」なのだそうだ。確かに蜘蛛の母親は背中に子蜘蛛を背負って育てている。ブルジョワにとっては、蜘蛛は包み込んでくれるイメージがあるのだろう。たいていの人は、蜘蛛は気持ち悪がっているけど、本当はブルジョワがイメージするように安心する象徴にとらえられるかも知れない・・・
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年4月11日号(vol.164)掲載
by tocotoco_ny | 2008-04-10 04:25 | ヴェルサイユの鯖
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