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vol.135/落とし穴<Takaki Matsumura>

「涙」
 女の人の涙に男は弱い。端で見ているぶんにはいいが、実際目の前で見てしまうと、平気で入れられ男は少なくないだろう。そんな女の人の涙だが、計算で流すという人がいるみたいなことを、テレビなどでもたまに聞いたりする。果たしてそれは本当なのだろうか? 私がここで言いたいのは、涙を流すことが計算でできることなのかということではない。それは、数々の名優たちが映画で証明してきていることで、それを普通の人ができないということはないだろう。
 つまり、いつ涙を見せれば、何とかなるだとか、そういう思考回路が身につくのかということだ。おそらく、幼い頃の体験が影響しているのではないかと強く思ってしまう。たいていの場合、倫理観が邪魔をして、そういうのは良くないと思ってしまうだろうが、その倫理観を壊して、「この場面で」なんて思う、または、上手くいくだろうと選択肢の中に上がってくるのはいつの頃からなんだろう。
vol.135/落とし穴<Takaki Matsumura>_f0055491_11504862.jpg そんなことを思ったのは、つい先日、仕事の関係で試写会のもぎりをしていた時のことだった。上映が始まって少し経ったころ遅れて会場に到着した親子。お母さんに私と同じもぎりの人間が、上映中の入場はお断りしていますと説明すると、女の子が、「どうなるの?」とお母さんに聞いた後、お母さんが「見れないんだって」と言うやいなや、表情を変え、涙がこぼれた。どうしようもない現場には、「できることなら見せてあげたいんだけどなぁ」という空気が充満した。それまでは、もぎりの人間も申し訳ないだけれど、お断りして返ってもらおうという、訳の分からない決まりを守るという日本人特有の正義感のようなものが、その使命の遂行に力を貸していたのに、あの女の子の涙がその空気を一発で変えた。
 この涙を私は計算だとは思わないが、間違いなく彼女は分かっているだろう。自分の涙が空気を変えたことを。とんでもない力を持ったモノを生まれながらにして持っていることを。
 結局、その後、その親子は会場に入ることになった。この経験が彼女の心の中でどういう消化のされ方をするのか、それは誰にも分からないことだが、もしかするとこんなことが計算の涙のきっかけになっているのだはないだろうか。
「マネをしてはいけない」
 関西人に非常に有名な話で、「生卵を電子レンジにかけてはいけない」ということがある。これは、関西のおばけ深夜番組「探偵ナイトスクープ」で視聴率30%を超えた回に放送されたもの。クリスマスイブに関西人は何を見ているんだかと思うかも知れないが、この放送はそんな恋人たちがいちゃいちゃする日に放送されたが、ものすごく印象に残る回となったのだ。
 生卵を(正確に言えばなんでもなんだが)電子レンジで加熱すると、中のきみから温められ、水分が飛ぶもんだから、爆発してしまうのだ。さらに、上手く(?)タイミングが合えば、殻をむいても爆発せず、口の中で爆発する(絶対マネをしてはいけません)なんてことにもなってしまうのだ。こんな話のように、世の中にはこういうことをしてはいけませんよということがある。
 先日聞いたのは、メントスとコーラが危ないということだ。メントスを食べながらコーラを飲むと、これまた爆発するらしいのだ。有名な話のようなので、ご存じの方もおられるだろうが、この危険性は、やってしまいそうなところにある。メントスを食べながらコーラを飲む風景は、結構自然に想像できて、やってしまいそうな感じがあるからだ。
 生卵に関しては、知識があれば、「そういうことをやっちゃあいけないな」と思えそうなものだが、世の中には、日常的にやってしまいそうなことに落とし穴がある。そう考えると、いつも落とし穴に落ちる可能性があることを忘れてはいけない。
(原文まま)
*掲載号では、誤字、脱字は校正し、編集したものを発行*
2008年7月11日号(vol.170)掲載
by tocotoco_ny | 2008-07-11 11:49 | Kamakiri no ashi
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