ロバート・メイプルソープの写真展「POLAROIDS:MAPPLETHORPE」
ホイットニー美術館で9月7日まで開催 ●メイプルソープ事件とは、アメリカで1992年に出版された「MAPPLETHORPE」の日本語版(写真右下)を、94年に刊行した映画配給会社で出版元の「アップリンク」社長・浅井隆さんが、99年再渡米し、同写真集を持って帰国した際、東京税関成田税関支署で「輸入禁制品(わいせつ図画)に該当する」として没収され、訴訟問題に発展した事件である。 東京地裁の一審(02年1月)では「わいせつ図画には該当しない」として処分の取り消しと損害賠償(約70万円)を国側に命じる判決を下した。しかし国側は控訴。続く二審(03年3月)では一審判決が取り消され「税関の処分を妥当とする」判決が下った。浅井さんは同判決を不服として最高裁判所へ上告。そして今年2月19日、最高裁で「わいせつ図画に当たらず」という判決が下され、国側敗訴が確定した。 この、日本で約10年もの時間をかけて「わいせつか否か」が問われていたロバート・メイプルソープの写真展「POLAROIDS:MAPPLETHORPE」が、現在、市内ホイットニー美術館で9月7日まで開催されている。 同展は彼が1970〜75年に撮った1500枚以上のポラロイド作品からの抜粋で、シカゴ出身の女性パンクアーティストで詩人のパティ・スミス(Patti Smith)を始め、最初のボーイフレンドだったと言われる写真家でモデルのデヴィッド・コロランド(David Croland)や、常に彼をサポートし続けた美術品収集家のサム・ワグスタッフ(Sam Wagstaff)など、主に彼の恋人(または友人=ダンサーやパフォーマー)となった人々のポートレイト93点が展示されている。 この93点のうち、1点のみがコラージュ作品で、紫色に色づけされたドギーバッグの中央に穴を空け、その穴からアミ越しに自身のポートレイト画像が見えるといった1枚だ(作品の一部=同左)。この1点を除く92点は、実際のポラロイド写真の大きさで「10.5cm×13cm」と小さいので、迫力面には欠けるが、彼が放つ異彩な世界は充分感じ取ることができる。 ポラロイド社が今年2月、同カメラのフィルム製造を中止し、来年以降のフィルム販売を取り止める発表をしたことを受け、現在でも同カメラを使用して作品を作り続けている多くのアーティスト間で、時の流れを嘆く声が聴かれる中での同写真展。 ポラロイドカメラなしで、彼の芸術は成り得たのだろうか? またどのように展開しただろうか? 若い芸術家たちがポラロイドの代用品ともとれる手軽な「カメラ付き携帯電話」で何かを創り出そうとしている昨今、21世紀のメイプルソープと呼ばれる作家が現れることにも期待したい。 ●インフォメーション 「POLAROIDS:MAPPLETHORPE」 Whitney Museum of American Art 945 Madison Ave. (at 75th St)/212-570-3633/www.whitney.org 水、木、土、日曜=午前11時〜午後6時、金曜=午後1時〜午後9時、月、火曜=休館 入館料=大人15ドル/62歳以上の高齢者・学生10ドル(ID必要)/11歳以下の子供及びメンバーは無料 2008年8月15日号(vol.172)掲載 Copyright © 2000-2008 tocotoco, S.Graphics all rights reserved.
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| 2008-08-12 02:19
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